胸を熱くする瞬間


毎日新聞No.582 【令和3年1月24日発行】

 1月11日、第99回全国高校サッカー選手権大会の決勝戦が行われ、山梨学院高校が11年ぶり2度目の選手権優勝を果たした。対戦相手は優勝候補の筆頭と言われていた全国トップクラスの強豪である青森山田高校。試合は延長戦を経ても終わらない壮絶な戦いとなり、PK戦の末の勝利だった。山梨県民の方々においては、山梨県代表の雄姿をご覧になった人も多くいるのではないだろうか。
 山梨学院高校が初めての選手権優勝を成し遂げた11年前、私も彼らと同じように高校生だった。当時、画面の中で活躍していた選手たちの姿は、自分と同じ高校生とは思えないほど、たくましく、そしてまぶしいものだったことを今でも覚えている。その時の決勝戦の対戦相手も、今回と同じく青森山田高校だったこともあり、久しぶりに高校サッカーを見た私は、山梨学院高校の前に再び立ちはだかる強豪という、まるで漫画やアニメのストーリーかと思うような展開に、改めて学生スポーツの面白さを感じた。

 新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、オリンピックをはじめとして、多くのイベントやスポーツの大会が延期・中止となった。インターハイなどの学生スポーツも同様である。そのような情勢の中、山梨学院高校の選手たちが見せてくれた活躍は、少しの時間だけでもコロナのことを忘れさせてくれるものであり、そして、思わず叫んでしまうほど胸が熱くなる気持ちを思い出させてくれた。また、コロナの影響によりインターハイなどが中止となったことで、練習の成果を発揮できず、自分の思いを遂げられなかった学生たちにとっては、一層、伝わるものがあったのではないかと思う。

 新型コロナウイルスの感染者数増加は深刻なものとなっており、1月7日には首都圏1都3県に緊急事態宣言が発令され、その後対象地域が拡大されるなど、予断を許さない状況となっている。明るい兆しはまだまだ見えてこないのが現状だが、今年こそは再び多くの学生たちの躍動する姿が見られることを願うばかりである。そのために、見えないゴールであっても、一歩ずつ手探りで歩んでいこうと思う。また胸を熱くするような瞬間が来ることを信じて。

(山梨総合研究所 研究員 清水洋介