Vol.270-2 山梨県常住外国人人口データに見る新型コロナウイルスの感染拡大の影響


公益財団法人 山梨総合研究所
理事長 新藤 久和

1.はじめに

 新型コロナウイルスが話題に上るようになったのは、一昨年の12月であった。当初、日本では寄港した豪華客船で感染が広がったため、感染拡大に対してそれほど危機感がなかった。しかし、その後、感染は拡大の一途をたどるようになり、2020年4月7日には緊急事態宣言が出された。2021年に入って、1月7日に2回目の緊急事態宣言が発出された。また、海外渡航が禁止されたこともあり、経済活動の鈍化によって就業が難しくなり、特に、外国人居住者にとっては一層厳しい状況に置かれることとなった。
 そこで、山梨県に居住する外国人がどのような影響を被ってきたか、「山梨の人口(pref.yamanashi.jp)」に基づいて検討することとした。県全体と甲府市および特徴的な影響を受けている都留市を取り上げる。他の市については付録としてデータを示すこととする。

2.県合計

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響が現れるまでは、山梨県においては製造業などをはじめとして人手不足が叫ばれており、外国人常住人口は増加しつつあった。20191月の外国人常住人口は13,253人で、男は5,959人、女は7,294人であった。それが、12月には7.2%増の14,206人となり、男は6,540人(9.7%増)、女は7,666人(5.1%増)となった。男より女が1,000人超多いことがわかる。自然増減では、毎月5人前後の自然増がみられるが、2、3人の自然減がある。社会増では、国外からの増加がもっとも多く、次いで県外からの増加が続いている。4月、5月、10月が多いのは年度や学期の切り替わりと関係しているようにみえる。社会減に目を向けると、4月がもっとも多くなっている。これは、年度末の転出の影響と考えられる。年間通して県外への転出による社会減が多いことがわかる。社会減では、社会増に比べて「その他」に分類されている人数が多くなっている点が注目される。ここで、「その他」は、社会増と社会減において、それぞれ職権記載および職権削除等による件数をさしている。
 2020年1月における外国人常住人口は14,326人であったが、11月では14,029人と2.1%(300人ほど)減少した。男は、6,652人から6,591人へ0.9%(61人)、女は7,674人から7,438人へ3.1%(236人)減少した。女の減少が著しいのは、レストランや接客業などの営業時間の短縮や営業自粛などの影響が現れているものと考えられる。自然増減では、減少は前年とほとんど変わらないものの、増加は倍近く増えている点が注目される。社会増は4月の675人が最も多く、6月以降10月まで200人を下回っている。また、6月から11月まで、県外からの転入が毎月100人前後とほぼ一定している。国外からの転入は入国制限の影響もあり激減している。社会減では、4月の660人がもっとも多い。1月から4月まで国外への転出が毎月120人前後で推移しているが、5月以降は大幅に減少している。その他に分類されている人数が県外への転出による人数と同程度となっており、「その他」の内容を検討することも必要である。

図1 2019年の外国人常住人口と増減(県全体)

 

図2 2020年の外国人常住人口と増減(県全体) 

3.甲府市

 2019年甲府市における外国人常住人口は、1月は男1,989人、女2,381人の合計4,370人であったが、12月には、男2,225人、女2,483人の合計4,708人と338人(7.7%)増加した。男が11.9%増と女の増加率4.3%の3倍近くなっている点が注目される。自然増減は、毎月それぞれ数人以内で推移している。社会増は、4、5月と10、11月が多く、国外からの転入が半数以上を占めている。4、5月に県外からの転入が多いのは入学や異動によるものと考えられる。社会減は、4月と9月が突出している。特に、4月は県外への転出が多いのに対し、9月は国外への転出が多くなっている。2020年1月は4,679人(男2,226人、女2,453人)であったが、11月には4,410人(男2,155人、女2,255人)と269人(5.7%)減となった。男が3.2%減となったのに対し女は8.1%減と3倍近く減少している。2019年に比べて自然減は5人と大幅に減少した。社会増は4月の県外からの転入の141人が目立つが、他は5月を除いて合計でも50人を下回っており、コロナ禍の影響が認められる。社会減も同様に4月の県外への転出が145人と最も多くなっている。 

3 2019年の外国人常住人口と増減(甲府市)

 

図4 2020年の外国人常住人口と増減(甲府市)

4.都留市

 都留市の2019年の外国人常住人口は増減がみられるものの、年間通じて600人前後で推移している。山梨県全体では女が男より多いが、都留市においては男の方が多くなっている。自然増減はほとんどないといってよい。社会増は国外からの転入がほとんどを占めており、その人数にほぼ対応する人数が県外への転出による社会減となっていることがわかる。これは、弊所山本直子主任研究員によれば、市内にある日本語学校が国外から技能実習生を受け入れて日本語研修を行っており、修了後に県外企業で技能実習するために転出していることを反映していると考えられるとのことである。2020年に入っても、前年と同様な推移を示しており、年度末の3月(データ上は4月)まで新型コロナウイルスの感染拡大の影響はほとんどみられない。しかし、4月には緊急事態宣言が出されるに至り、社会増も社会減も急激に減少して現在に至っていることがわかる。


図5 2019年の外国人常住人口と増減(都留市)

 

図6 2020年の外国人常住人口と増減(都留市)

5.おわりに

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、ワクチンの投与が始まった国もある。これにより、拡大に歯止めをかけられるのではないかと期待が集まっている。しかし、変異型ウイルスも現れるなど、状況は予断を許さない。結局は、一人ひとりが感染を拡大させないよう注意するしかない。こうした中で、経済活動を制約しなければ拡大を防止できないということで、営業自粛や営業時間の短縮などが行われている。法律を改正し、罰則を設けてまで拡大を防ごうとしなければならない、非常に厳しい状況にある。ある程度の制約は必要だと理解していても、仕事を失ったり収入が減少したりして生活できない人の増加は何とかしなければならないことはいうまでもない。しかも、影響を大きく受ける人たちは、社会的に弱者である。その中には、多くの外国人が含まれている。人口減少の日本にとって、これから人手不足解消のためにも外国人材の受け入れは不可欠である。この難局を彼らとともに克服していくことが求められる。 

 

付録

富士吉田市

2019年 富士吉田市 外国人常住人口等

 

2020年 富士吉田市 外国人常住人口等

山梨市

2019年 山梨市 外国人常住人口等

2020年 山梨市 外国人常住人口等

 

大月市

2019年 大月市 外国人常住人口等

2020年 大月市 外国人常住人口等  

 

韮崎市

2019年 韮崎市 外国人常住人口等

 

2020年 韮崎市 外国人常住人口等

 

南アルプス市

2019年 南アルプス市 外国人常住人口等

 

2020年 南アルプス市 外国人常住人口等

 

北杜市

 2019年 北杜市 外国人常住人口等

 

2020年 北杜市 外国人常住人口等

 

甲斐市

 2019年 甲斐市 外国人常住人口等

2020年 甲斐市 外国人常住人口等

 

笛吹市

2019年 笛吹市 外国人常住人口等

 

2020年 笛吹市 外国人常住人口等

 

上野原市

2019年上野原市 外国人常住人口等

2020年上野原市 外国人常住人口等

 

甲州市

 

2019年 甲州市 外国人常住人口等

 

2020年 甲州市 外国人常住人口等

 

中央市

2019年 中央市 外国人常住人口等

 

2020年 中央市 外国人常住人口等