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 年が明け、早くも1月が終わろうとしている。新型コロナウイルスという恐ろしい感染症はいまだ収まる気配を見せていないが、例年であれば、この時期に猛威を振るっていたのは同じ感染症であるインフルエンザだ。毎年の感染者数は国内で1,000万人を超えていたような状況であり、コロナ以前においては、最も恐ろしい感染症の一つと言えただろう。しかし、昨今ではコロナ関連の報道がメディアを占め、インフルエンザの話題はほとんど目にすることがない。果たして、今シーズンはどのような状況なのだろうか。

 先日1月15日の厚生労働省の発表によれば、令和3年1月4日から1月10日までの7日間におけるインフルエンザ発生状況について、全国の定点医療機関から報告されたのはわずか73例となっており、前年同期の64,553例に比べ、0.1%程度と激減している。山梨県内にあっては、10月中旬に1例が確認されたのみとなっており、それ以降は感染が確認されていないそうだ。また、例年であれば、インフルエンザの流行に伴い学級閉鎖も多くなるが、昨年の1月5日時点では全国11,519施設で学級閉鎖が行われたのに対し、今シーズンは1月10日時点でわずか3施設のみとなっている。インフルエンザの流行のピークは一般的に1~2月といわれており、これから感染者数が増える可能性もあるが、例年ほどの流行となることは考えにくいだろう。

 インフルエンザの感染者数が激減している背景として、今般の新型コロナウイルス感染拡大の影響があるといわれている。マスクの着用や手洗い、うがい、消毒、密を避けるといった基本的な感染症対策の徹底が、インフルエンザの感染抑止につながっているそうだ。例年、インフルエンザの流行期にはそれら対策の推奨が盛んに言われてきたが、思いがけずその効果が実感できたというところだろう。その他にも、一つの細胞にウイルスが感染した場合、他のウイルスに感染しにくくなる「ウイルス干渉」という現象や海外との往来の減少により、ウイルスが持ち込まれにくくなったことなども感染者数減少の要因として挙げられるという。
 長引く新型コロナウイルスとの闘いの中で、疲れや慣れから緊張感、危機感が薄れてきていると感じることがあるが、あらためて基本的な対策の重要性を認識し、今後もその徹底を心掛けていきたいと思う。

 (研究員 清水 洋介)