ともに成長する組織へ


毎日新聞No.587【令和3年4月4日発行】

 気がつけば、もう4月である。
 自治体や民間企業からの出向者で構成される山梨総研は、3月末で3名が出向元に戻り、4月から新たに3名がやって来る。この原稿が掲載される頃には、新たな顔ぶれが揃っていることだろう。

 私自身、山梨総研に着任してちょうど1年になるが、新しい組織の中で久しぶりに自治体の計画づくりに携わったり、自治体や企業の皆さんと意見を交わしたりと、忙しい日々を過ごしてきた。そんな1年を通じて、一体自分はどれくらい変わったのだろうか、ふとそんなことを考えてみた。
 「成長」は若いうちのことであり、一定の年齢を過ぎると体力も含めて「衰退」の一途を辿ると考えている人も少なくないだろう。しかし、単に知識やスキル、体力といったものだけではなく、自分やその周りを俯瞰的に観ることなど、時を重ねるからこそ得られる「成長」もある。それ以前に、自分自身で限界を決めてしまった時点で、成長は止まってしまうのかも知れない。
 皮肉なことに、自分自身の成長を意識すればするほど、その限界を思い知らされることにもなる。いくら努力したところで、一人で解決できる問題には限りがある。一方で、みんなで協力しようにも組織の中でひとり一人が目指す方向がばらばらであれば、直面する問題の解決に組織全体の力を発揮することは難しい。
 限界を知ることは、自分自身の弱みと向き合うことでもある。それでも実現したい未来があるとするならば、他者と力を合わせることで弱みを補い合い、その実現を目指すことが不可欠となる。限界を超えるために必要なのは、一人の力だけではなく、みんなの力なのだ。そのためには、「わたし」という個の分断を乗り越えて、いかに「わたしたち」という視点から未来を描き共有することができるかが問われる。

 新年度を迎える今、新たな顔ぶれを迎える組織も、また今まで通りの顔ぶれであっても、お互いの強みと弱みを認め合い、みんなで目指すべき未来を共有することで、ともに成長できる組織づくりを目指してみてはどうだろうか。そこにこそ、様々な困難が立ちはだかる「今」という限界を超えるヒントがあるのかも知れない。

(山梨総合研究所 調査研究部長 佐藤文昭