デジタル社会はやってくる
毎日新聞No.592【令和3年6月13日発行】
デジタル庁が9月に発足する。「準備中」とあるホームページを覗いてみると、デジタル改革担当の平井大臣のコメントよりも上部に「行政を透明に。」というタイトルで、文章や画像などを投稿できるメディアプラットホームへの案内がある。そこには、なぜデジタル庁が設立されるのか、どんな役割を担うのかが、お役所言葉ではないわかりやすい文章とイラストで丁寧に書かれている。リンク先のコメント欄に対しては「この記事へのコメントはすべて見ます!」とあり、担当者の熱量の高さがうかがえる。
そんなデジタル庁でもITに関するプロフェッショナル人材の確保は中途採用で行っている。官民を問わずデジタル化の進展には、技術系人材とその技術を理解できる人材が数多く必要になるが、現在のところまだ十分供給されているとは言い難い。しかしそんな状況も今後は変わっていくだろう。今から約2年前、政府は「AI戦略2019」を打ち出し、その中で「数理・データサイエンス・AI」をデジタル社会の「読み・書き・そろばん」として習得できるよう、小学生から社会人までのリテラシー教育に長期的に取り組むとした。来年度からは高校でプログラミングを学ぶための「情報Ⅰ」が必修科目となり、巷ではデータサイエンスを学べる情報系学部・学科を新設する大学も増えている。デジタル人材の増加により、デジタル化は更に進展していくだろう。
では近い将来、デジタル技術が浸透し人々の生活があらゆる面でより良い方向に変化したデジタル社会が到来すると、我々の生活は一体どのように変わるのだろうか。自動運転車やロボットによる労働代替、AI家電の普及する未来では、おそらくこれまで費やしてきた社会的価値の生産に係る時間がかなり縮減されることになる。つまり、私たちは新たな時間の余裕を得ることができる。
問題になるのはその時間の使い方だ。更なる労働につぎ込むのも良いが、私個人としては家族や親しい仲間と過ごす時間に費やしたいと思っている。デジタル社会ではそのような時間的な豊かさも大切にされることを期待したい。
(山梨総合研究所 主任研究員 前田 将司)