消防団活動から地域を開け


毎日新聞No.594【令和3年7月11日発行】

 集中豪雨、台風、地震、火山噴火など自然災害が頻発している昨今。特に夏と豪雨は、切り離せなくなっている。その夏がやってきた。
 私は消防団に入り早8年、幸いにも水害を経験したことがないが、十数回の消火活動経験がある。特に記憶にあるのは、建物が全焼となってしまった時であり、消火活動は夕方から翌明け方まで続き、一睡もせずにその足で職場に出勤した消防団員もいた。消防団の活動は、消火活動だけでない。消火訓練、消火栓点検、防災・減災の啓発活動、災害時の見回り、雪かきなど、実に多種多様な地域活動を担っている。消防団員は非常勤特別職の地方公務員でありボランティアではないが、報酬が少なく、体力仕事や危険が伴うことから「究極のボランティア」といっても過言ではない。地域防災の要であることを私自身も非常に誇らしく思う。

 山梨県によると、山梨県内の消防団員は2019年4月1日現在で 14,787人が活躍しているものの、近年減少傾向にある。災害の多様化・大規模化だけでなく、高齢化に伴う要支援者の増加などにより、消防団に対する期待は以前にも増して高まっている。近年、出動時の手当見直しなど処遇改善に向けた動きが進むとともに、新たな担い手として公務員に焦点が当てられることにより公務員の従事者も増えている。消防庁によると、2017 年 4 月 1 日現在、全国における公務員の消防団員数は 67,151 人であり、年々増加傾向のようだ。ただし、実際の有事には、職場を離れることができず、消防団活動に専念できない場合もある。

 そこで新たな担い手として期待されているのが学生である。秋田県大館市のように、福祉医療系の大学生で構成する機能別消防分団を設置した例もある。地域に貢献したいと思う若者も多く、活動は、地域社会に入っていくことや、住んでいる地域を見直す上でのひとつのきっかけにもなるだろう。災害の最前線に立てとまでは言えないが、活動を通じて得られる多種多様な職種の人たちとのコミュニティは、今後の人生設計を考えるうえで、社会への視野・可能性を広げるきっかけになるのではないか。

(山梨総合研究所 研究員 廣瀬 友幸)