豊かさ実感できる山梨に


毎日新聞No.595【令和3年7月25日発行】

 私事であるが、615日付で「公益財団法人山梨総合研究所」の理事長に就任した。前理事長の新藤久和氏の後を引き継ぎ、大きな責任を感じている。
 当研究所の目指すところは、地域の価値を再認識し、地域と連携しつつ地域社会の発展に貢献していくことである。

 それでは、地域の価値とはどのようなものだろうか。山梨県は製造業の特化係数(付加価値額)が日本のトップクラスであるとともに、世界文化遺産である富士山に象徴される自然にも恵まれている。その他にも、素晴らしい地域資源がたくさんある。それぞれが地域の価値であり、これらは地域の「豊かさ」と深く関係している。
 先日、2020年の「都道府県幸福度ランキング」が発表された。これは、地域社会に生きる人々の幸福を考えるきっかけをつくることを目指して、2012年から2年ごとに日本総合研究所が発表している。
 山梨県は、今回総合7位にランキングされた。前回は6位だったが、前々回の14位からここ数年で順位を上げてきている。
 また、ブランド総合研究所による「都道府県『幸福度』ランキング2021」でも、山梨県は堂々の4位にランキングされている。昨年の12位からこちらも大きく順位を上げてきている。
 では、これらの順位が、山梨県に住んでいる人が感じている豊かさを反映しているかというと、そうでもない面がある。同じくブランド総合研究所による「地元愛が強い都道府県ランキング2020」によると、山梨県は25位であり、前年の33位から順位を上げたものの、それほど高いわけではない。
 山梨県は客観的に見て豊かな県であるにもかかわらず、住んでいる人がその豊かさを十分感じていないのではないだろうか。これは、以前からよく言われてきたことでもあるが、なぜ客観的な豊かさが実感につながらないのだろうか。

 個人的にも、そして地域に根差したシンクタンクとしても、地域の価値を検証し、更にはそれらを発信することにより、実感できる地域の豊かさの向上につなげていきたいと考えている。

(山梨総合研究所 理事長 今井 久)