「お疲れ様、ありがとう!」


毎日新聞No.596【令和3年8月8日発行】

 723日に開幕し、17日間行われてきた東京オリンピックが終わる。開催に至るまでに様々な紆余曲折があり、また新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、開会式も含め大半の会場が無観客となるなど、前例のない形となった今回のオリンピックだが、そのような中でも選手たちの活躍は目覚ましいものだったと感じている。

 個人的に印象に残っているのは、東京オリンピックから正式種目となったスケートボードである。筆者もかつて少しだけスケートボードに触れた経験があるが、普通に滑るだけでも転んで傷だらけになっていたので、手すりを滑り降り、ボードが足に吸い付いているように華麗に飛ぶ選手たちの姿は衝撃的だった。また、アメリカのスポーツというイメージが強い中で、日本人が金メダルを獲得したことも非常に喜ばしいが、オリンピックという大きな舞台でありながら、選手たち皆が、チャレンジに失敗しても笑顔でスケートボードを楽しんでいる姿がとても印象的で、スポーツにおける本来の楽しさのようなものを体現しているように思えた。
 スケートボードのほか、BMXフリースタイル、サーフィンが今回から正式種目として追加されており、これらの競技は危険を伴いながら高さや華麗さを競うことから「エクストリームスポーツ」と呼ばれている。スポーツとしての側面だけでなく、ファッションや音楽への影響力といった文化的な側面を持ち合わせていることから若者に人気の高いスポーツだが、これらのスポーツに対するイメージや偏見から、日本ではなかなか理解が得られてこなかった歴史がある。今回のオリンピックにおける選手たちの活躍を機に、純粋にスポーツとしての楽しさが伝わったことで、こういった新しいスポーツやカルチャーへの理解が進んでいくだろう。

 新型コロナウイルスの感染者数が増加し続ける中での開催となった東京オリンピック。開催についての賛否をめぐる報道や、直接の応援が届かないという状況下で選手たちは計り知れない不安とプレッシャーを感じていたと思う。まずは選手たちに「お疲れ様、ありがとう。」と伝えたい。

(山梨総合研究所 研究員 清水 洋介)