公共施設における民間資金の活用
毎日新聞No.601【令和3年10月17日発行】
公共施設の老朽化が大きな社会問題になっている。山梨県内に限らず、自治体の財政状況がひっ迫する中で、老朽化した公共施設の廃止や統廃合等が全国各地で検討されるようになってきた。
このような中、公共施設の整備や建て替えにおいて、「民間事業者」が資金調達の主体となり、設計から建設、維持管理、運営までを民間事業者のノウハウを活用して行う「PFI方式」を採用するケースが増加している。PFI方式は、民間事業者の創意工夫により低廉かつ良好なサービスの提供を目指すものであり、山梨県内の自治体でも導入の検討に向けた動きがみられるようになってきた。それ以外にも、民間事業者に複数の施設やインフラの維持管理業務等を包括的に委託することでコスト削減を目指す「包括的民間委託」など、多様な官民連携手法の導入が全国的に進められている。
一方で、公共施設の整備や改修のために、クラウドファンディングで「個人」から資金調達を行う事例もみられるようになってきた。自治体がふるさと納税制度を活用してクラウドファンディングにより寄付を募り、その使い道を特定のプロジェクトに限定することで、老朽化した文化施設の改修事業や廃校のリノベーション事業などの資金調達が行われている。ただし、クラウドファンディングは日本全国から寄付金を集められるメリットがある半面、支援者が集まらない場合は寄付金が目標額まで到達せず、結果として事業が実施できないというリスクもある。
筆者はこれまでクラウドファンディングを通じて、学生団体による空き家リノベーションや、母校の老朽化したテニスコート修復などのプロジェクトに寄付を行ってきた。プロジェクトの社会的意義や実施主体の想いに共感した事業に対して、寄付という形で貢献することは、支援者にとっての喜びにつながるものでもある。
もしふるさと納税を検討する際は、思い出の場所や応援したい公共施設のために寄付することも、選択肢の一つとして考えてみてはいかがだろうか。
(山梨総合研究所 主任研究員 櫻林 晃)