達成と感謝


毎日新聞No.603【令和3年11月28日発行】

 10月終わりから11月にかけて3つのイベントに末席から関わらせてもらった。
 「日本女性会議2021 in甲府」(甲府市)、「ハタオリマチフェスティバル」(富士吉田市)、「ワインツーリズムやまなし2021・秋」(笛吹市、甲州市、山梨市)である。

 「日本女性会議2021 in甲府」は、新型コロナウイルス感染拡大を受け、通常開催→対面+オンラインの併用開催→オンライン開催と、何度も実施方法を見直し、開催に至った。参加者を迎えて直接の交流ができなかった点は残念だったが、シンポジウム、分科会、講演、アトラクションと、画面越しながらも熱気が十分に伝わる会となった。
 また、3年ぶりの開催となった「ハタオリマチフェスティバル」は、数か所のエリアに分かれ実施される特徴も手伝い、多くの人が思い思いの足取りで行き交い、マスク越しの笑顔が印象的だった。来場者と出展者(機織業者)はもちろん、出展者同士も交流が盛んに行われ、どこに行っても会話が弾む。秋晴れの初日から一転、雨模様となった2日目も引き揚げる業者はなく、テントで織物が濡れないよう、自社・他社の製品の区別なく皆で織物を守りながら業者自身もイベントを楽しんだ。
 峡東地域に点在するワイナリーをバスやタクシー、徒歩で巡る「ワインツーリズムやまなし2021・秋」では、笛吹市のワイナリーで運営に参加した。時間が経つのも忘れてワインの話に花を咲かせる参加者と醸造家の姿があり、「久しぶり」「おかえりさい」と言葉を交わすリピーターも多かった。
 コロナ収束という“トンネルの出口”が見通せず、いつ中止の判断を迫られるかわからない中、各イベントの主催者や関係者からは、十分な感染防止措置をとりながら前に進もうという気迫を感じた。無事に開催できた喜びは、当たり前に開催できた時とは比にならないだろう。参加者の笑顔に心を動かされたのは、関係者の苦労を知るからこそかもしれない。

 幸福学・感動学の研究者で慶應義塾大大学院の前野隆司教授は著書「感動のメカニズム」の中で、非営利型の経験の中での感動は、第一に自分の努力が報われた「達成」、次いで「多者への感謝」が大きく関わっているという調査結果を示している。今回のイベントはまさに「達成」と「感謝」による感動創出が起こっていたといえる。
 一つの仕事に取り掛かるとき、不安感に押しつぶされそうになり、逃げたい気持ちが先行し、なかなか着手できないことがある。そんなときには「達成」と「感謝」を思い起こすことで、自らを動かす推進力としたい。

(山梨総合研究所 主任研究員 渡辺 たま緒)