週末は東京にいます
毎日新聞No.604【令和3年12月12日発行】
総務省が先日公表した国勢調査の確定値によると、2020年10月1日時点の山梨県の人口は81万人を下回った。5年ごとの調査であるので5年前との比較となるが、約2万5千人減少した。全国的に見ても、前回の41番目から42番目に後退した。
しかし、ここ1年を見てみると違った傾向も見えてくる。今年の10月1日までの1年間における山梨県の人口の社会増減は306人の増加であった。わずかではあるが、年間で社会増になったのは2001年以来、月別でも、10月1日まで6か月連続で増加している。
過去20年を振り返ってみると、毎年平均で約2000人の社会減があり、最も多い年では3377人の社会減を記録している。そう考えると、ここ1年の社会増は画期的なことであり、コロナ禍における人々の価値観の変化が要因であることは間違いない。
東京圏にアクセスが良く、自然が豊かで、経済的にも暮らしやすい山梨を移住先として選ぶ人が増えてきているのではないだろうか。県内でデジタル関連の仕事をされている方によると、都内から山梨に移住してきたデジタルクリエータは少なくないという。遠隔で仕事をするケースが多いため、生活環境を考えて山梨に移住してきている。
若者にとっても、山梨は居住地として魅力的な存在になりつつある。ただ、重要なのはそこでの仕事である。更に言うと、仕事や生活における自己実現感が重要になってくる。
遠隔で仕事ができる環境があり、東京圏での会社で仕事ができる場合、山梨にいながら自己実現が達成できる。課題は、県内の企業が若者が自己実現できるような環境を提供できるかどうかであり、そのためには企業側の意識改革も必要となる。
一方、遊びも含めていろいろな意味で東京圏が魅力的に感じる人も少なくない。そこで、山梨に居住しながら、週末は東京に出かけていくといったライフスタイルは今後増えてくるのではないだろうか。これも、東京圏にアクセスがいい山梨ならではの魅力である。私も、ここ1-2年はコロナ禍の影響で出かけてはいないが、東京に行って刺激をもらうことも多々ある。
山梨にいながら東京も、そんなライフスタイルが定着してきたら山梨県の人口減にも歯止めがかかるのではないだろうか。
(山梨総合研究所 理事長 今井 久)