毎日ご飯1杯分のごみ
毎日新聞No.605【令和3年12月26日発行】
SDGsが国連で採択され、持続可能な社会への取り組みが進められてから、より「食品ロス」を目や耳にする機会が増えた。コンビニで賞味期限の近い手前のものから手に取るように促すポップが貼られていたり、賞味期限の近い商品を買うとポイントが付与されたりと、食品ロス削減のための取り組みを目にしたことがある人も多いのではなかろうか。私が子供の頃は、親に賞味期限が長いものを買うように教わり、陳列棚の手前の商品をではなく奥に手を伸ばして、商品を取っていた。賞味期限が近いものを買うとよく怒られたものだが、今となっては非常に恥ずべきことをしていたと猛省している。
猛省するきっかけになったのは、農林水産省が公表した「日本の食品ロスの状況」を目にしてからだ。日本の食品ロスは年間約600万トン。国民1人当たりに置き換えると年間約47kgである。1日当たりだと約130g、これは茶碗約1杯分のご飯に相当する量である。それまでは、人ごとに思っていたが、毎日毎日歯を磨くような日常生活の中で無意識にゴミ箱にご飯を捨てている感覚を覚え、非常に危機感が募った。
世界には、飢餓で苦しむ人が約8億人もいると言われている。日本は、飢餓とは無縁と思われがちだが、年間約20人が食糧不足により死亡している。その一方で、大切な地球の資源がゴミ箱に捨てられているのである。
食品ロスは、資源が無駄になるだけでなく、焼却処分などによりCO2は発生し、その排出量は世界の温室効果ガス排出量の約8%ともいわれている。また、そのごみ処理費用は日本で約1兆円と税金も多く使用されている。
コロナウイルスの感染拡大がやや収束し、忘年会など、徐々に飲食の機会が増え始めているいまこそ、一人一人が「毎日茶碗約1杯分のご飯を捨てている」ことを意識し、日々の食生活を通じて食品ロスを削減していくことにより、大切な資源や税金が未来のために活用されることを期待したい。
(山梨総合研究所 研究員 廣瀬 友幸)