少し手間をかけて
毎日新聞No.606【令和4年1月9日発行】
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」と新年のあいさつを伝えるものと言えば、年賀状である。皆さんは毎年、年賀状を送っているだろうか。最近ではスマートフォンで一言メッセージを送れば済んでしまう時代になり、わざわざ年賀状を作るのも面倒だからということで、送る人はかなり少なくなってきていると聞く。実際、筆者自身も年が明けた際の友人とのやりとりは今までSNS上がほとんどであったが、今年は数年ぶりに年賀状を出した。久しぶりに年賀状のデザインや文面を考える作業をしてみると案外と楽しいもので、来年以降もまた出してみようかな、という気持ちになってくる。
しかしながら、前述のとおり、年賀状の配達数は減少傾向にある。実際のデータを見てみると、日本郵便が発表した今年の元旦配達分の年賀郵便物数は10億3000万通で、昨年の11億5700万通から約11%減となった。その前年となる2020年の年賀状が12億8700万通だったので、毎年およそ1億3000通、約10%ずつ減少している計算となる。減少の要因は様々考えられるが、一つの要因として、メールやSNSが普及したことにより、特に若年層を中心に年賀状を送る習慣がなくなってきていることが挙げられるだろう。このまま行けば、そう遠くない未来に、年賀状を送る文化自体が無くなってしまうかもしれない。それもまた時代の流れとともに合理的なツールを用いた方法に置き換わっているだけなのかもしれないが、一抹の寂しさを覚えずにはいられないところだ。
確かに年賀状は手間がかかるものである。しかし、メールやSNSではない方法だからこそ伝わる気持ちもあるのではないだろうか。私としては、普段から連絡を取り合っている友人でも、年賀状を送ってくれると嬉しいと感じるし、そういう気持ちのやりとりが年賀状を送る意味なのだと思う。情報通信の発達で、簡単にコミュニケーションがとれる時代になったからこそ、時には少し手間がかかる方法の大切さを見直すことも必要ではないだろうか。
(山梨総合研究所 研究員 清水 洋介)