多様性と寛容性


毎日新聞No.609【令和4年2月20日発行】

 今年の13日、テレビ山梨(UTY)新春特別番組「やまなしイノベーション」に司会進行役として出演させていただいた。県内で起業した若き経営者4人による座談会である。4人の経営者には、起業のきっかけやこれまでの苦労、そしてこれからのビジョンなどを聞き、山梨の魅力についても触れた。

 番組の最後に、座談会の感想と視聴者への、特に若い視聴者へのメッセージを聞かれたが、脳裏をよぎったのは「ダイバーシティー & インクルージョン」。
 ダイバーシティーは多様性であり、インクルージョンはそれを受け入れる寛容性である。この言葉は経営の文脈で使われることが多い。社員として働いている多様な人たちを尊重し受け入れ、その個性を上手に活かしていくことが企業の経営にとって重要という意味である。
 しかし、私が座談会で感じたのは、個人視点のダイバーシティー&インクルージョンであった。4人が経営している会社の事業内容は異なっており、起業のきっかけやビジョンに関しても三人三様、いや四人四様であった。その中で、若い視聴者に感じてもらいたかったことは、もし自分に何か思うところがあったら、他の人の考えと違っていても、気にせずにチャレンジしてほしいということである。4人の経営者がそうだったように……。
 私はアメリカに10年住んだ経験があるが、その際感じたのは、いろいろな価値観の人がいるということであった。「Youは何しに日本へ?」というテレビ番組があるが、見ていて感じるのは、やはりいろいろな人がいるということである。

 さまざまな考え、価値観を、まずは受け入れることが重要だと思う。もちろん、自分の価値観と合わないとか、自分の考えと違うというのはあってしかりであるが、最初から受け入れないことはしてほしくない。
 これからを担っていく若者には、どんな価値観もまずは受け入れ、その上で自分で判断する力を身に付けることを望みたい。そして、たとえ自分の考えが他の人と違っていても、気にすることなく突き進んでほしい。

(山梨総合研究所 理事長 今井 久)