ラストワンプレー♪
毎日新聞No.611【令和4年3月20日発行】
大学時代に所属していたバレーボールサークルでは、練習の最後にキャプテンが大きな声で「ラストワンプレー」の声をかける。その日がどんなに盛り上がっていても、時間がくれば必ず終わりは宣言される。毎回、終わってしまう切なさを感じながらも、最後のプレーにみんながより一層集中するのが分かる。いいプレーで今日の練習を締めよう!と。
就職し、いくつもの締め切りに追われる状況は、さながら毎日がラストワンプレーであるかのようだ。その中で、今の自分は、大学時代のラストワンプレーのような集中力でいい仕事をしようともがいているのかもしれない。
私事だが、3年前に山梨総研に来てから新鮮な日々を過ごしてきた。組織を越境してきたこともあり、雰囲気も、仕事の仕方も、おそらく価値観もちがい、絶対的な正解などないことも実感した。すべてが学びではあったが、とくにワークショップやヒアリングなど「話をきく」中で、ハッとするような気づきの場面を数多く経験した。またそれらは、ふとした雑談の中で交わされる本音であることも多かった。
3年間のさまざまな経験の中で、気づけば自分の「?」を表現することが随分と増えた。それは、「どうしてですか?」「なぜそう思うのですか?」から始まる、一歩踏み出したキャッチボールを始めた途端、対話の質が高まることで相手との関係が濃くなることを知ったからだ。大人になると「こんなことを聞いては失礼だ」という気持ちの鎧が、コミュニケーションを躊躇(ちゅうちょ)させてしまうことも多い。しかし経験上、「また今度」の機会がそれほどないことも知っている。サークルであれば毎週同じ曜日に集まるが、社会に出ればそうもいかない。
そうだとすると、「ラストワンプレー」の集中力は社会人にこそ必要だ。人との出会い、仕事との出会いは一期一会なのだから、毎回の出会いを最後だと思って精いっぱい関わらなければもったいない。
変化の早い時代だからこそ、逃げていきそうな「今」に集中し、さまざまな人や仕事との出会いに対して、自分から一歩踏み出して関わり、全力で向き合っていたいと思う。
皆さんもどうぞ
お試しあれ♪
(山梨総合研究所 主任研究員 山本 直子)