「癒し」効果を求めるなら


毎日新聞No.612【令和4年4月3日発行】

 スフェーン、スピネル、クンツァイト…と聞いてピンと来る人は、その世界のトレンド通かもしれない。答えは789月の新たな誕生石。昨年12月、全国宝石卸商協同組合が誕生石としてラインアップに加えた10石のうちの三つである。誕生石はこれまでのものと合わせて計29石となった。

 63年ぶりにおこなわれた誕生石の改定は、コロナ禍で買い付けや展示会の中止など打撃を受けた業界の起爆剤として期待を集めている。最近の報道によれば、卸業者も誕生石の売り上げが増加するといった効果がさっそく表れているという。
 誕生石、宝石というと敷居が高いと感じる方もいるかもしれない。しかし近年は比較的安価なブレスレットやピアスといったアクセサリーが店頭で手に入るようになり、筆者もパワーストーンの魅力の沼にすっかりはまっている一人だ。「慈愛」「冷静沈着」「魔除(まよ)け」といった意味を一覧できる“石辞典”を自作し、その日の気分によってアクセサリーを選ぶのが日課となっている。仕事で出会う人、友人知人がパワーストーンを身に着けているのを見ると、その人の心持ちが伝わってくる気もする。
 山梨県は言わずと知れた宝飾・貴金属産業の集積地である。水晶の産地としてスタートし、宝石研磨の職人を多く抱えるなど、ジュエリーのメッカとされてきた。貴金属・宝石製装身具製品製造業(ジュエリー)の事業所数(4人以上)は100近くを数え、同出荷額は2020年(19年実績)の工業統計調査では約265億円と、事業所数、出荷額ともに全国一だ。

 さて、4月の誕生石も新顔が加わった。エメラルドやアクアマリンなどと同じ「ベリル」の一種で、淡いピンク色が美しいモルガナイトである。「愛」「許し」「癒やし」などがキーワードとされている石だ。元々の誕生石であるダイヤモンドに比べれば求めやすい石なので、パワーストーンのホットスポットである山梨で、ぜひ、一度手に取ってみたらいかがだろうか。

(山梨総合研究所 主任研究員 渡辺 たま緒)