どうする国・自治体の借金
山梨日日新聞No.2【令和4年5月14日発行】
経済におけるウイズコロナへの順応が進んでいる。失業者数や生活保護の申請は高水準が続いているが、経済全般をみると深刻な状況は落ち着き始めている。
山梨県では主要産業の一つである半導体製造装置の生産で繁忙が続くなど、総じて全国的にも製造業は改善傾向である。また、客足が遠のいていた飲食業や観光関連業種では、感染拡大前の賑わいがかなり戻ってきているようだ。そして、個人消費も一般的には持ち直しが進んでいる、と言われる。
そんな中、筆者が懸念するのは、国や自治体の借金である。教科書的な発想ならば、国や自治体は健全財政を規律とする中で、景気が悪くなれば公共事業や補助金、給付金などの支出を増やし、場合によっては赤字財政なども辞さず需要の下支えを図る。その結果景気が良くなれば支出を減らす一方で税収が増え、財政は黒字転換など改善が進む。ところが、東日本大震災後まもなく日本の景気は拡大に転じ、税収も伸びたのであるが、国や自治体の借金は高水準にとどまり、コロナ感染が拡大してからは急速に増えている。
無論、セーフティネットの一環として必要としている方々に財政的な支援を実施することは当然だが、期待される経済効果が十分発生しているかは、疑問を呈する声もある。全国規模で度々実施されてきた全世帯一律や、子育て世帯、年金受給者などを対象とした、生活の余裕度に関わらず支給される手当は、果たして所期の効果を生み出しているのだろうか。本当に必要な人のみに届くように、時々話題に上がる年末調整やマイナンバー制度の活用により特に必要としていない方から返納される仕組みを求めたい。
山梨県では、県有地の有効活用や本県の「富」に着目した新たな収入源の検討など収入を増やす取り組みがみられるが、国や自治体の借金問題を解決するために、私たちも行政に過剰なサービスを求めていないか考え、行政運営にもっと関心を持つことが必要であろう。人口減少に当分歯止めがかからないことが周知の事実の中で、年々減っていく子供世代が国を支える将来に、到底手に負えないような大きな借金を残すことは避けたいものである。
(山梨総合研究所 専務理事 村田 俊也)