地域に必要なものさし
山梨日日新聞No.3【令和4年5月28日発行】
山梨総合研究所では、令和2年度から自主研究として、山梨県中小企業家同友会との共同により、『地域において持続可能な経営を行うためには何が必要なのか』を明らかにすることを目指した調査研究を開始した。この研究では、地域に根差した中小企業が、その経済活動を将来にわたり持続可能なものとしていくため、企業と地域社会との“つながり”を核とした経営に着目し、今後の中小企業経営の指針を示すことを目的としている。
企業と地域社会とのつながりとは具体的にどのようなことか。その一つは、私たちが日常生活やビジネスにおいて「どこの企業と取引をするか」を選択することである。例えば、どこの会社から商品を買うか、どこの会社に仕事を依頼するか、どこの会社で働くか、などである。そして、企業を選ぶ際には、一般的に「安い・便利・手軽」といった価値観や、「大手・知名度」といった価値観が重視されやすいのではないだろうか。しかし、これらの価値観だけでは、人材や資金などの経営資源が限られる地域の中小企業であっても、規模の大きい企業やグローバル企業との競争で勝ち続けることが求められてしまいかねない。一方で、地域の中小企業でも、地域社会から選ばれ続ける企業であれば、将来にわたり事業を継続することは可能であろう。
これまでの調査研究では、地域の中小企業にインタビューを実施してきた。その結果、経営者の理念を日々の事業活動で体現することの大切さや、地域内における顧客や取引先、従業員等との信頼関係の構築が重要であることが分かった。一方で、その信頼関係には、それぞれの企業やその経営者が持つ独自の価値観が反映されていることも分かってきた。そして私たちは、この地域と企業をつなぐ新たな考え方を「ものさし」と名付けた。
本リポートの月後半の掲載では、地域に根ざした中小企業の現地調査や経営者などへのインタビューを通して、地域の企業が持つ「ものさし」は何かについて報告をしていきたいと考えている。あわせて、このインタビューを定期的な公開サロンとして開催することで、地域の皆さんと一緒に企業と地域社会のつながりについて考えてみたい(サロンの開催予定などは、山梨総合研究所HP(https://www.yafo.or.jp/)を参照)。
(山梨総合研究所 主任研究員 櫻林 晃)