在宅介護と家族の就労


毎日新聞No.617【令和4年6月12日発行】

 一般社団法人日本認知症予防学会は、アルツハイマー博士の生誕日である6月14日を「認知症予防の日」として記念日に登録している。厚生労働省によると、65歳以上の高齢者に占める認知症高齢者の割合は15.0%とされており、実に高齢者のうち約6人に1人が認知症を発症している計算となる(平成29年度高齢者社会白書)。
 これに対し、山梨県では、認知症高齢者の割合は11.3%2021年現在)、長野県では10.6%20年度現在)と、両県ともに全国平均に達してはいないものの、高い数値であることに変わりはなく、市町村によっては既に全国平均を上回っているところも見られる。

 こうした認知症の進行は、介護保険サービスを受けるにあたっての要介護認定にも大きく影響している。筆者の祖母は90歳を越えてから身体的な衰えが顕著となり、自宅内での転倒をきっかけに入退院を繰り返すようになり、要介護4となる中でも退院後は在宅で過ごしていた。
 要介護4といっても一概に同じ状態とは言えないものの、認知症もかなり進行していた祖母は、昼夜逆転の状態となると夜間に家族を頻繁に呼び出したりするなど、筆者と両親の家族3人誰もが疲れていたが、いずれも日中は自身の仕事をしながら、懸命に在宅での介護にあたった。
 そんな中、母は早期に仕事をリタイアし、晩年の祖母の生活に寄り添い、父も昼夜を問わずそのサポートにあたった。筆者も認知症介助士の資格を取得した。その甲斐もあってか、93歳で亡くなるまでの晩年の祖母には笑顔も戻り、何よりも生きることに一生懸命であった。

 厚生労働省では、24年度から始まる次期介護事業計画の策定に向け既に動き出しており、国の指針等により各自治体で計画の策定が進められる。その指針の中では、「高齢者等の適切な在宅生活の継続」と「家族等介護者の就労継続」の実現がうたわれている。施設入所なのか在宅介護なのかは、当事者やその家族をめぐるさまざまな要因によって異なり、一概に何が正解かは見出せないが、適切な在宅生活とは何か、介護者の就労継続はどこまで可能か、今後作られる計画にはその具体性と実効性を期待したい。

(山梨総合研究所 研究員 宇佐美 淳)