社員が笑顔であること
山梨日日新聞No.5【令和4年6月25日発行】
私たちは、働くことに何を求めているのか。対価としての賃金とともに、働き甲斐という意見もあるなか、この問題に、地元企業はどのように向きあっているのか。
今回取り上げる山梨ユニフォーム(株)は、「ユニフォームを通して日本を元気にする」を合言葉に、企業へのユニフォームの提供や小売店WORK-Sにて土木業等の職人をターゲットにスタイリッシュなユニフォームの販売、刺繍・プリント加工などを手掛けている。筆者が店舗を訪れると、職人が楽しそうに商品を見つめ、社員も笑顔で溢れていた。
同社代表取締役の田中昇氏は、社員が笑顔であることを大切にしている。その言葉の通り、社員の発案でTikTokやInstagramにて楽しそうにお店の情報発信を行っている。それを見て県外から来店される方もいるという。また、社員の三枝さんは、もともと情報発信やイラストに興味があるなかで、広報部に配属され、実際にSNSやデザインを任せられることは非常に働きがいがあると、生き生きと話してくれた。
同社は、「働きやすい会社」と「働き甲斐のある会社」の二つを目指している。前者は給料や有給休暇など会社が整えるべきことであるのに対して、後者は社員自らが掴み取るものである。そのために、社員の適性を踏まえた上で、TikTokのようにひとり一人が自主的に行動できる権限を与えている。それと同時に、お互いに尊重しあいながらも言うべきことを言う厳しさを持つことにより、共に成長できる環境を整えている。「働き甲斐がある会社でなければ、潰れる。ここが稼ぐところで、会社は稼がなければだめ」と田中氏は話す。働き甲斐から稼ぎを生み出す。まさに、社員の成長は、企業の成長である。
なぜ田中氏は社員の笑顔を大切にするのか。私たちは、自分の行動によってだれかが笑顔になると、自らも幸せを感じる。社員自らが考えた商品・サービスにより、お客様が笑顔になることは、社員もそのような仕事に幸せを感じ、それが最終的に企業の成長にも、地域の豊かさにもつながるからといえよう。
私たちは、働くことを通じて、誰かを幸せにしたいと心の奥底では思っているだろう。しかし、日々の慌ただしさの中で、そのことを考える余裕がなくなっているのかもしれない。一歩立ち止まって、働く意味を考える。顧客や社会のことを考える。それが人・企業の成長につながる第一歩ではなかろうか。
次回の地元企業の魅力発見サロンは7月4日。ゲストは丸浜舗道(株)。詳細は山梨総合研究所HP(https://www.yafo.or.jp/)まで。
(山梨総合研究所 主任研究員 廣瀬 友幸)