スポーツで山梨活性化
山梨日日新聞No.6【令和4年7月16日発行】
スポーツ資源と旅行や観光を組み合わせ、地域振興につなげる「スポーツツーリズム」が脚光を浴びている。スポーツ庁は第3期スポーツ基本計画の中で、ウィズコロナでの「アウトドアスポーツ」、ポストコロナを見据えてインバウンドにも人気の「武道」ツーリズムの推進を打ち出している。
山梨県内でも韮崎市が3月にスポーツコミッションを、県が4月にやまなしスポーツエンジンを立ち上げ、官民一体となったスポーツによるまちづくりの機運が盛り上がりつつある。スポーツツーリズムというと、真っ先にマラソンや自転車競技などの大規模なイベントを想起しがちだが、ここでは、既存施設を活用し、全国から1千人以上を誘致した例を紹介したい。
2月中旬、小瀬武道館で、2日間にわたり全日本剣道連盟(全剣連)主催の剣道六段、七段審査会が開かれた。過去に全国規模の大会を何度か主管した県剣道連盟の運営力が評価されたもので、県内では初開催。県剣連役員らがコロナ感染予防対策など事前の会議を重ね、当日は筆者も含め県内会員約90人が係員として運営に携わった。
全剣連によると、北海道から沖縄まで20代~80代の1300人余りが受審のために来県し、大半が県内に宿泊したとみられる。全剣連の役員、審査員ら40人も2泊するなど、県内への経済効果も一定程度あった。係員は、緊張する受審者に平常心で臨んでもらえるよう、声掛けや掲示を工夫し、感染予防対策として館内の動線を一方向に誘導した。
審査後、首都圏の受審者から「とてもよい会場と段取りがよいスムーズな運営だった。スタッフの皆さんの感じがよくて、いい審査会にしよう!という思いが伝わってきた」とメールがあり、係員に共有して労をねぎらった。全剣連の高沢彰事業部門主幹は「素晴らしい武道館と、あれだけ広い無料駐車場がある場所は全国でも数少ない。富士山が見える環境、そしてバス、タクシーの公共交通機関もあり、円滑な運営もあって受審者から好評だった。今後も山梨で全国審査会をお願いしたい」と評価する。
スポーツツーリズムを推進するためには、まず県内の既存施設をリストアップし、その価値を把握し、有効活用の方策を探ること。そして参加者の県内への滞在時間を増やすために周辺都県だけでなく、全国からも人を呼べる魅力ある大会を企画する力、スタッフの実行力などが重要になる。美しい景観という最大の強みのある山梨は、スポーツツーリズムの先進県になることも夢ではないはずだ。
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山梨総合研究所創立25周年記念フォーラムは7月30日、山梨学院大で。詳細は山梨総研HP(https://www.yafo.or.jp/)まで。
(山梨総合研究所 主任研究員 鷹野 裕之)