地方の「豊かさ」
山梨日日新聞No.8【令和4年8月27日発行】
「豊かさ」とは何か、そう聞かれたとき皆さんならどう答えるだろうか。もし、「豊かさ」を経済的な面のみで捉えるとすると、地方は東京などの都市部に比べて未成熟な部分が多い。しかし、笑顔でいきいきと暮らせること、多様性を認め合えること、ともに助け合える人間関係があることなど、経済的な利益だけではない様々な「豊かさ」が世の中には存在している。そんな多様な「豊かさ」は地方の価値になりえるのではないだろうか。
「社会を豊かにする仕事にクリエイティブな力を掛け合わせる」をコンセプトとするブランディング会社の株式会社DEPOT(デポ)は、2015年に設立されて以降、様々な企業の広報や商品・サービスの企画制作などを手掛けてきた。人とのつながりや地域の資源を活かしている事業者が、多くの人に長く愛されるために、誰に何をどうやって届けるかについて一緒に考えることが同社の仕事だという。「おしゃれやかっこよさということだけではなく、地方にしかない価値を大事にしたい。」と代表取締役の宮川氏は話す。
今までブランディングを通じたクライアントの支援を主な事業としてきた同社だが、社会を豊かにすることに直接関わるための新たな一歩として、甲府の中心街から地域における新たな「豊かさ」を考えるためのシェアスペースを開業した。多様な人々がつながることが出来る場所を提供しつつ、地域の人々と一緒に「豊かさ」について考えていきたいとしている。「社会を豊かにするためには、まず地域に住む一人ひとりが豊かになることがスタート。そこから、地域の事業者、まちが豊かになり、豊かなまちが増えれば社会が豊かになる。そして社会の豊かさが、また個人の豊かさに循環する。そんな豊かさについて地域の皆さんと一緒に探求していきたい。」と宮川氏は語る。
山梨をはじめとする地方は、都市部に比べると圧倒的に人は少ないが、少ない中にも都市部と同じくらい多様な人々がいて、それぞれが持つ価値観があり、それぞれが考える多様な「豊かさ」が存在している。それらがつながり、掛け合わさることで、社会を豊かにするアクションが生まれることもある。多様な人、価値観、そして「豊かさ」がつながることが、山梨が豊かになるきっかけとなるはずだ。
次回の地元企業の魅力発見サロンは9月5日。ゲストは(株)プロヴィンチア 古屋 浩 氏。詳細は山梨総合研究所HP(https://www.yafo.or.jp/2022/08/23/17485/)まで。
(山梨総合研究所 主任研究員 清水 洋介)