Vol.290-1 山梨県における医療機器関連産業の振興とメディカル・デバイス・コリドー推進計画


(公財)やまなし産業支援機構理事長  メディカル・デバイス・コリドー推進センター長
山梨県立大学特任教授 元山梨総合研究所主任研究員  手塚 伸

 

1.はじめに

 山梨県は20113月に「産業振興ビジョン」を策定した。趣旨は、今後、山梨県において成長が見込まれる産業分野を明らかにし、ここに向けて県内の中小企業の皆様がどのような経営革新を進めるべきか、その方向性を示す、という極めてシンプルなものだ。
 その大きな柱の一つに「医療機器、介護機器、生活支援ロボット製造産業」があった。策定年月を見てお分かりかと思うが、公表案をまとめ、オーソライズしようとしたまさにその時、東日本大震災が発災し、何とも言えない複雑な心境で策定作業を続けたことを昨日のことのように思い出す。
 歳月は過ぎて、長崎幸太郎山梨県知事が最も重要視する政策である「医療関連産業の振興による山梨県の活性化」の道筋として「メディカル・デバイス・コリドー推進計画(MDCP)」が20203月に策定され、これを推進する拠点として「同推進センター(MDCC)」が同年6月に(公財)やまなし産業支援機構内に設置され、支援活動を行っている。
 この政策・施策が必要とされる背景や現在の状況、そして今後の方向性等について、私見となるが報告したい。

 

2.歴史に見る不老長寿願望

 紀元前210年前後、中国古代の秦国の始皇帝が神仙方士である徐福に不死の妙薬を探せ[i]と命じた。徐福は、3000人くらいの童男女と百工を連れ日本に到着したと伝えられる。各地に徐福到来の伝説が存在し、山梨県にも富士吉田市や富士河口湖町に伝わり、史跡が存在する。
 山梨県の貴重な産業である絹織物産業は、徐福によりもたらされたとの説があるほどだが、結末としては、不死の薬は見つからず、徐福一行は故国に帰ることなく本邦で生涯を全うしたらしい。
 さて、始皇帝は不死の妙薬を得ることができなかったが、本邦の帝はこれを得ることに成功している。竹取物語のエンディング「富士の煙」[ii]によれば、月からの迎えにより、帝と別れなければならないかぐや姫は帝に、月からの使者が持参した「不死の薬」を渡す。帝は不老不死の薬を手に入れたのだが、月に去ってしまった「かぐや」への思いを「逢ふこともなみだに浮かぶわが身には死なぬ薬もなにかはせむ」と嘆く。
 そして、家臣に命じ、最も月に近い富士山頂でその薬を焼却させてしまう。凡人からすると何とももったいない話だが、この視点はとても大事で、人は何かの幸福を前提として生きていく。大まかに言ってしまえば、不老不死ではなく健康幸福寿命が極めて重要ということになる。
 ところで、日本人の平均寿命はどのくらいだったのだろうか。本邦初の国勢調査は1920年で、その時点では、女子43.20歳、男子42.06歳。それ以前は統計的に調べようもないが、例えば鴨長明は「40に足らぬほどにて死なんこそ、めやすかるべけれ」[iii]と記しているので、平均寿命は、少々強引だが徒然草の頃から約600年かけて3歳程度延びたこととなる。
 さらに話は横道にそれるが、「サザエさん」の磯野波平さんをご存じの方も多いと思う。波平さんがテレビに登場したのは1969年。この時点での設定年齢は54[iv]で、社会背景としては、大企業の定年年齢は55歳、男性の平均寿命が65.32歳だから、平均的な話をすると来年定年を迎え、約10年後には平均寿命に達することになる。
 一方で、2019年時点での平均寿命は女子87.45歳、男子81.41歳だから、波平さん登場時点と比較すれば、50年で約20歳、最初の国勢調査から数えると100年足らずで約40歳、と大きな伸びを示している。
 こうした変化は、地域や家庭における衛生環境の改善、疾病や傷病を癒やす新薬の開発、医療機器の高度化などによる医療技術の向上、救命救急医療体制の進化などによりもたらされた。そして、これらの背景には、こうした技術を医療現場で実装する医師など専門人材の高度化、これら医療・健康に関する機器や薬を開発・生産する産業群の絶え間ないイノベーションへの取り組みがあった。

 

3.医療機器関連産業振興の背景

 冒頭に述べたように、山梨県の医療機器関連産業振興への取組は2011年頃からスタートし、2020MDCPの策定を機に一気に加速化している。ここでまず、こうした産業の特徴について、市場環境と山梨県の産業構造とをベースに整理する。

 

① 市場環境

 まず、長寿化社会における健康ニーズの高まりや、感染症など新たな疾病・傷病への対応の必要性から、常に新たな機器開発があったこと。これに加え、国内のみならず全球的にニーズがあり、市場規模が拡大していることが挙げられる。
 例えばアジアにおいても多くの国々で高齢化が進んでおり、国内のみならず全球的に健康に関するニーズが増大し、市場規模が拡大している(図表1参照)。

 

図表1 世界の医療機器市場推移(出典:我が国医療機器・ヘルスケア産業における競争力調査報告書(株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所)

 

 次に、医療機器は他の製品と異なり、比較的景気に左右されず、安定したニーズが期待できると同時に、実用化された機器は比較的長期にわたり利用されるため、安定した生産が見込めるなど、生産者側にとって望ましい市場環境となっている。
 その一方で、医療機器開発にはさまざまな参入障壁が存在している。製造・販売に関する業許可や製品化する際に求められる届出、認証、承認などの法規制、製造過程で必要とされる品質管理や安全保障に関するリスクコミュニケーションなどが代表的なものとなる。
 また、医療機器製造販売業における商取引慣行が他の産業とは大きく異なることや、治験や臨床などにおけるアカデミア等との関係づくり、国民健康保険をはじめとする社会保障制度との調整など、特殊な仕組みが参入を難しくしている面もある。

 

② 本県の産業構造

 一口に医療機器といっても、内科を受診する際、まず胸にあてられる聴診器や手術の際に用いられるメス、鉗子(かんし)、さらにはダヴィンチなど手術ロボット等、さまざまな物がある(写真参照)。特に近年、医術の進歩と並行して、微細な加工、特殊形状に対応する加工、さらにはさまざまな電子デバイスを装着した装置類など、複雑な加工技術や素材の横展開などが求められている。

 

 

写真 さまざまな医療機器(MRI(左上)ハサミ、鉗子(右上)、カテーテル(左下)、滅菌封入された舌圧子(右下))

 

 機械(メカニズム)的要素、電子(エレクトロニクス)的要素を縦横無尽に組み合わせて今日の医療機器は設計・試作・製造されており、正にメディカル・メカトロニクスの坩堝(るつぼ)となっている。例えばCT(コンピュータ断層撮影)やPET(陽電子放出断層撮影)には、半導体産業に由来する技術が多く用いられている。
 ところで、山梨県の機械・電子産業は、製造品出荷額の6割以上を占める県の基幹産業だ。半導体製造装置や工作機械、産業用ロボット分野の上流部に位置するメーカーを頂点に、高い技術力を有するサプライヤーが、層の厚い産業構造を形成している。
 こうしたサプライチェーンは、今日の医療機器の設計・開発・製造と極めて親和性が高く、サプライヤーが要素技術を横展開できると、大手医療機器メーカーへのコア部品の提案、また、自社における新製品の開発・上市に当たり、大きな強みとなる。
 その一方で、こうしたサプライヤーはほとんどが規模の小さな企業であることから、設計・開発を担う人材が不足する傾向にある。また、製品開発や技術開発に当たっては人材に対する投資ばかりでなく、研究開発投資や設備・備品などに対する投資、情報収集やネットワーク形成に対する投資などが必要とされるが、体力的に厳しい企業も当然多い。
 さらに、前述した通り、医療機器産業の特殊性から、法規制やリスクコミュニケーションに多くの費用が掛かるばかりか、これらをクリアするための知識や、大手医療機器メーカーを頂点に形成されている独特のサプライチェーンに入り込めないなどのソフト的な問題も抱えているのが現状だ。簡潔にSWOT分析としてまとめると図表2のとおりとなる。

 

図表2 医療ヘルスケア産業に関する市場参入環境分析

 

4.MDCPとMDCCについて

① MDCPの概要

 前項で整理した市場環境を踏まえ、機械電子産業をはじめ、ものづくり企業の優れた技術の蓄積を生かしながら、今後も成⻑が期待されている医療や健康に関連した産業等の育成を図ることを目的に、20203月にMDCP[v]が策定されている。この計画が目指す姿は次のとおりとなっている。

 

 本計画は、山梨県が有する機械電子産業のものづくり技術や立地特性を活かし、医療機器関連産業を、本県を牽引する産業に育成するべく、医療機器関連分野への参⼊を強力に推し進め、医療機器関連産業を甲府盆地から静岡県東部の医療産業集積地「ファルマバレー」を結ぶ⼀帯に集積するメディカル・デバイス・コリドー構想を実現することを目指します。(山梨県メディカル・デバイス・コリドー推進計画から抜粋)

 

図表3 山梨県メディカル・デバイス・コリドー推進計画の目指す姿

 

 また、こうした姿を実現するため、基盤構築(20202022(短期))、成⻑フェーズ(20232024(中期))、拡大フェーズ(20252030(⻑期))の3ステージを設定し戦略的に産業集積を築くこととしており、本年度が基盤構築ステージの最終年度となる。基盤構築ステージの特徴として以下の点を挙げておきたい。
 まず、支援体制の確立として「専門組織の設置」と「関係支援機関との連携促進」が明記されている。次に、企業支援策の充実・強化として、部材供給網拡大を掲げていることがある。前者は後述するMDCCのことであり、後者は図表2において分析した中小企業の弱み対策として重要な点となる。
 法規制やリスクコミュニケーションを中小企業がすべて解決していくには、大きな困難が伴う。しかし、図表2の強みで示した通り、技術的な強みを持っているとすれば、これらを用いて大手製販メーカーとの協業は不可能ではない。これを進めることにより、実際に売り上げが立つことなどを皮切りに、参入への意識のハードルが下がっていくことが考えられる。
 現実に、計画策定時の医療機器産業への参入企業数70社を、基盤構築フェーズ終了時には100社に引き上げるという目標水準は、6月末現在で128社と既に達成[vi]されている。ただし、次期ステージでは、部材供給を超えてODM[vii]型あるいは研究開発型の中堅企業を育てていくことは必須ではないかと考える。

 

医療機器産業への参入企業数が6月末現在で128社と既に目標水準を達成していることを報じた新聞紙面(2022年9月19日付、山梨日日新聞社提供)

 

 次に、「連携の促進」という視点。これまでも山梨大学医学部を中心に産学連携の取り組みを進めてきたが、これを公立、さらには民間病院にまで広げること、また、医療・ヘルスケア産業先進県である静岡県のファルマバレーセンター(PVC)との連携など静岡県との連携を強化することが明示されている点も重要となる。

 

② MDCCについて

 MDCCは、MDCPを推進する要の役割を担う拠点として設置された。一言で表現すると、医療機器専門人材であるコーディネーターが、やまなし産業支援機構と一体となって「医療機器開発」「部材供給」「販路拡大」「規制等への対応」を伴走支援できる体制(図表4参照)を有したセンターで、次のような支援事業を展開している。

  • 医療機関・製販企業のニーズ収集・分析・スクリーニング
  • 県内企業との共同研究・部材供給マッチング
  • 臨床試験などのコーディネート
  • 開発・販路開拓補助金獲得など資金面の支援
  • 法規制、知財権、PMDACEマーク等の審査相談
  • 展示会出展など販路開拓支援

図表4 MDCC体制図(常駐者以外は必要に応じてセンター勤務)

 

 既にお気づきかもしれないが、産学官連携+静岡連携により、図表2において分析した「機会」「強み」を最大化するとともに、「脅威」「弱み」をさまざまな施策を通じて極小化する取り組みそのものとなる。
 特徴としては、メディカル・メカトロニクスにおける日本の第一人者である妙中義之先生にスーパーバイザーとしてご就任いただき、大所高所から方向性をご指示いただくとともに、専門知識とスキルを有したコーディネーターを配置し支援に当たっている。また、現実に起こるさまざまな課題に対応するため、各種専門家を要望に応じて派遣できる体制も整えている。
 やまなし産業支援機構は、こうした体制をトータルにマネジメントするともに、蓄積された企業ネットワークや多様な支援施策をメルティングさせつつ支援効果を高めている。(図表5参照)

図表5 センター全体のビジネスモデル

 

 次に、これまでの活動の経緯について、その一部を以下に報告したい。MDCPの目標水準については既に述べたところだが、まず、相談件数(図表6)は毎年大幅な伸びを示しており、県内企業の関心の高さがうかがえる。その中でも、部材供給に関する相談件数の構成比が最も高く、前述の論点に重なるものと思われる。
 また、相談から進展して事業マッチング、あるいは商談成立まで到達した件数(図表7参照)も、令和4年8月末時点で大きく伸びている。加えて県外からの発注案件も大きな伸びを示しており、県内企業の生産活動や経済循環に好影響を及ぼしているものと推測される。静岡県PVCとの連携も進んでおり、静岡県内からの発注案件が多いことも注目される。

 

図表6 相談内容及び件数(令和4年度は8月末現在 MDCC資料)
図表7 受発注の状況 (MDCC資料)

 

5.医療・健康・福祉をめぐる現状と今後

 さて、ここまで一部ではあるがMDCPの考え方及びこれに基づくMDCCの制度設計、特徴的な進捗状況について述べてきた。前述のとおり、MDCPは新たなステージに入るべく検討が進められていることと思われる。この部分については、筆者に推し測る能力は当然ないが、これからの医療・ヘルスケア産業の行方について、数ある論点の中から三つに絞って論じてみたい。

 

① 医療DXの進展「医療4.0[viii]時代への移行

 社会や経済のさまざまな場面に大きな影響を与えたCOVID_19による感染症の行方はまだまだ見極めがつかない。個人的に一番心配になるのは、幼稚園児から大学生まで、本来はさまざまなコミュニティの中で才能を開花させる時期であったはずなのに、この機会が失われたことによる「トラウマ」のようなものが残らないか、ということだ。
 希望はZ世代と定義される彼らが、SNSの中で駆使する言葉の中に見いだされる。例えば「自宅推しごと」。「お仕事」ではない。巣ごもりを余儀なくされる中で、自宅で意味のあるモノを創造することだと解するが、こうした映像が「絆確認」という言葉とともに共有される。また、クリケーション(クリエーションとコミュニケーションからの造語)といった創造的なモノ・コトづくりも共有される。樹脂や金属の3Dプリンターでさまざまなモノを創造的に造形できる時代にジャストフィットしていると思う。
 クリス・アンダーソンはこうしたことを「メーカーズ・ムーブメント」[ix]と定義し、いずれこの波がやってくると予言したものの、こと日本においてはそうはいかなかった。が、COVID_19により大きく先に進んだと考える。これと同じことが医療の世界にも起きている。
 コロナ前であれば考えられないような速度で、遠隔(デジタル)診療が認められた。これもまた同様に、AIによる診療ソフトが薬機法[x]による医療機器の承認を得て[xi]いる。こうした流れは、押し戻しようもなく、一気に医療DXが進展していくと予想される。第4次産業革命のコア技術であるデジタルテクノロジーにより、医療の世界に大変革が現れる。これは、次の三つの変化をもたらすといわれている。
 一つは、医療の多角化。健康、病気、予後の各ステージにおいて、病院だけではなく、社会や家庭などの場面で、遠隔診療を中心に医療行為が行われる。二つ目は医療の個別化。さまざまな医療データがビッグデータとして集められる。これらをAIが判断して個人個人に最適な処方を出していく。三つ目は医療の一人称化。これまでは受診機関ごとにデータがばらばらだったものが、一人一人を起点に統合されケアされる。

 

② 診断機器、治療機器の微細化

 2021年218日、次のようなプレスリリース[xii]があった。それは、文部科学省・科学技術振興機構「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」の川崎拠点「COINS」が、日本オープンイノベーション大賞選考委員会特別賞を受賞した、というものだ。
 対象となったのは、公益財団法人川崎市産業振興財団ナノ医療イノベーションセンター(所在地:川崎市川崎区殿町、略称:iCONM)を中核機関とし、2045 年までに、ウイルスサイズのスマートナノマシンが体内の微小環境を自律巡回し、24時間治療・診断を行うという「体内病院®」システムの構築を目指すというプロジェクトである。
 図表8のようなイメージだが、「薬剤などを搭載した超微細なカプセル(高分子ミセル)が体内を駆け巡り、がんやアルツハイマーなどの重大な疾患を、本人も気づかぬうちに早期発見し、その上治療までしてくれるという革新的な仕組みだ。検査や治療は病院で行うもの、という従来の常識を根底から覆す挑戦である。まるで50年前にはやったSF映画『ミクロの決死圏』のような世界が、もうすぐ日本の医療プロジェクトによって実現しようとしている。」が具体的なアウトプット[xiii]のようだ。
 今時点では夢のような話かもしれないが、イノベーションと時間軸が合えば、夢でもないかもしれない。私にはこのようなイノベーションを評価する能力は全くないが、こんな時代がおぼろげながら見えてくる。医療現場も産業界も、政策づくりの現場も、こうした出来事の行方をしっかりと見つめ、医療関連機器産業の振興を図り、そのことを通じて、地域社会のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の向上に貢献していくことが望まれると思う。

 

 

図表8 体内病院のイメージ(出典:科学技術振興機構SCENARIOホームページ)

 

6.ヒポクラテスたち・・・結びに

 これからの医療・ヘルスケア産業の行方について、三つ目は、項目を変えてお話ししたい。「ヒポクラテスたち」という映画をご存じだろうか。大森一樹監督が、京都府立医科大学の現役学生時代にメガホンを取った作品で「医学生が、臨床実習等を通じて医師の卵になっていく」[xiv]筋書で、さまざまな人間模様と青春が描写され、私の好きな映画でもある。
 学生時代に初めて観賞した際、恥ずかしながらなぜ哲学者「ヒポクラテス」なのか知識を持っていなかった。観賞後、ヒポクラテスは哲学者であると同時に医学の祖としても著名な人物であることを知り、冷や汗をかいた思い出がある。ヒポクラテスには「古い医術について」[xv]という著作がある。
 これには「空気、水、場所について」という論考が収録されている。少々難解でまとめにくいのだが、概略は「人は自然に包まれて生きているのだから、医師たるもの病人を診る際には、その人の環境の中で太陽がどのように昇り、風がどのように吹きわたっているか、どのような水を飲んでいるのか、そうしたことを知らなければいけない。」といった感じだ。もっと大胆に意訳すれば、個人個人の生活環境がその人に合った水準で平穏(無事)であることが重要だと言っているように思える。
 人にとって、長寿は何よりも重要なことかもしれない。これが高ずると始皇帝のように不老不死の薬に躍起になる。一方、「かぐやの帝」は不老不死の薬は手に入れたものの、自らの世界が平穏でなくなったため、その薬を焼却してしまった。
 結びになって話が思い切り飛躍するが、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)向上というとき、まず医療水準やこれを支えるさまざまなインフラの高度化が求められる。このことは追求すべき課題だが、併せて、平穏な地域社会に包まれていることが、上質なQOLの重要な要素であることも否定できない。こうしたことを併せた学際的な研究や取り組みもこれから必要になってくるのではないか、などと勝手に妄想している。


[i] 真説「徐福伝説」羽田武栄・広岡純著 2000年三五館などを参照した。

[ii] 竹取物語 大井田晴彦著 2012年 笠間書院 「富士の煙」を参照した。

[iii] 鴨長明 徒然草第7段 木藤才蔵 校注 新潮日本古典集成 昭和52年

[iv] フジテレビホームページ「番組紹介 サザエさん」を参照した。https://www.fujitv.co.jp/sazaesan/character.html

[v] 山梨県メディカル・デバイス・コリドー推進計画

https://www.pref.yamanashi.jp/seichosangyo/documents/korido-keikaku.pdf

[vi] 2022年9月19日 山梨日日新聞1面

[vii] 「OEMとは、Original Equipment Manufacturingまたは Original Equipment Manufacturerの略語で、委託者のブランドで製品を生産すること、または生産するメーカーのことです。ODMとは、Original Design Manufacturingの略語で、委託者のブランドで製品を設計・生産することをいいます。生産コスト削減のために製品またはその部品を他の国内企業や海外企業などに委託して、販売に必要な最小限の数量の製品供給を受けることにより、委託者である企業は大きなメリットを享受できます。」(JETRO貿易・投資相談Q&Aから引用)

OEMは、下請け企業的な存在だが、ODMは、企画提案型企業といった性格が強い。

[viii] 医療1.0は1960年代、国民皆保険制度が完成し医療提供体制が整った時代、医療2.0は1980年代、介護保険制度が導入され、老人福祉法に基づくゴールドプランが策定された時代、医療3.0は2000年代の、医療のICT化が進んだ時代と定義される。

[ix] MAKERS 21世紀の産業革命が始まる NHK出版 2012年を参照した。

[x] 正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」。第1条に「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行う。」ことが明記されている。

[xi] 本年4月末時点で、21のソフトウェアが承認を得ている(うち一部が保険収載済)。

[xii] https://iconm.kawasaki-net.ne.jp/pdf/20220601pressrelease.pdf

[xiii] 日経クロストレンド2022-2030大予測を参照(https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00561/00006/

[xiv] ウィキペディアを参照した。

[xv] 岩波文庫 小川政泰訳 1963年