スポーツが地域にもたらす力
毎日新聞No.625【令和4年11月1日発行】
10月16日、ヴァンフォーレ甲府が天皇杯全日本サッカー選手権大会で優勝を果たした。クラブにとっては悲願のビッグタイトル獲得であり、J1のクラブを立て続けに破っての優勝はまさに快挙である。決勝戦には大勢のサポーターがスタジアムに足を運び、熱狂し、喜びを分かち合った。また、多くの県民がテレビで試合を観戦し、山梨県全体に大きな感動をもたらしてくれた。来季はアジア・チャンピオンズリーグに挑戦することも決まり、今後の更なる躍進にも期待したい。
一方で、ヴァンフォーレ甲府は地域への貢献活動や交流活動にも力を入れている。2021年にはJリーグクラブ初のSDGs宣言を行い、スタジアムでのリユース食器の使用や、運動教室やスポーツ教室の開催など、環境や健康、教育といった幅広い分野の活動を実施しており、まさに地域をけん引するクラブチームとなっている。
スポーツは地域の活性化や地域課題の解決に貢献する力を持っている。サッカーに限らず、県を代表する選手やチーム、プロスポーツなどにおける県内出身者の活躍は、応援する私たち県民に勇気や感動を与えてくれる。また、プロスポーツの大会や市民マラソンなどのスポーツイベントが県内で開催されれば、地域内外から多くの人が集まるため、参加者や観客などの消費による経済的な効果も発生する。スタジアムや会場で行われるエコ活動は、参加者や県民の環境意識の啓発にもつながっている。地域で行われる趣味のスポーツ活動であっても、住民の健康増進や地域コミュニティーの活性化、仲間同士のコミュニケーションや生きがいづくりなどに貢献している。教育の現場においても、スポーツを通じて子どもの心や体を育むことができる。
スポーツには人を引きつけ、地域を元気にする力がある。スポーツが持つ力を認識し、地域の振興や活性化に積極的に生かしていくべきであろう。そのためには、私たち一人一人が主体的にスポーツに取り組み、地域でスポーツに関わる人を積極的に支えていくことが大切であろう。
(山梨総合研究所 主任研究員 櫻林 晃)