自主的な計画の策定を


毎日新聞No.627【令和4年11月27日発行】

 自治体行政における業務の多くが「計画」に基づいて取り組まれている。内閣府によると、自治体に計画の作成義務や努力義務等を課した法律の条項数は、2020年時点で505あり、2010年時点の345から約1.5倍に増加している。
 全国の自治体では、「計画」を策定すること自体が目的化してしまい、職員はその策定業務に多くの時間を割いているのが現状ではないだろうか。特に職員数が少ない町村では事態は深刻である。

 そうした現状を踏まえ、内閣府の有識者会議は、政府の方針として計画の作成義務は必要最小限にすることを基本原則にするとともに、作成の必要性等に疑問がある計画について自治体から意見を募集し、廃止を含めた見直しを進めることを報告書にまとめ提案した。
 有識者会議からの提案を受け、政府は、本年6月に閣議決定した「骨太方針」の中で、「地方の自主性及び自立性を確保する」ことをうたうとともに、各府省に対し、計画策定等に関する見直しの検討を求めた。
 これまでに、自治体から具体的な計画等そのものの廃止を求める意見が17件あったのに対し、関係府省による回答の多くは、議員立法であることや努力義務規定であることを前提に廃止には消極的な姿勢を示している。実際、最終的に廃止と決まった計画は1件止まりであった。
 こうした計画数増加の背景には、依然として計画の策定を新たに義務付ける法令の規定が創設されている他、努力義務規定やできる規定であっても、国からの補助金等の交付要件として計画の策定が求められるという、実質的な義務化の様相を呈してきている現状も見られる。
 確かに、国全体として共通した課題に取り組むため、各種法律に基づき様々な計画の策定が求められている。しかし、各自治体でそうした課題の解決にあたるには行政による取組だけではどうにもならないのも現状であり、そこには住民の協力が欠かせない。

 今後は、十分な協議の中で計画の廃止等についてより積極的に検討を進めるとともに、計画の廃止等により確保できる時間を有効に活用する中で、目指すべきまちの将来像について、住民の声を十分に聴き取った上で、真に自主的な計画の策定が求められる。

(山梨総合研究所 研究員 宇佐美 淳)