人のつながりの大切さ
山梨日日新聞No.14【令和4年12月10日発行】
社会経済リポートを寄稿することになって、さて何を書こうかと頭をひねると、書く内容よりも先に地元紙を読む多くの人の顔が思い浮かぶ。親類・友人や仕事を通じて知り合った人たちだけでなく、お世話になったマスターご夫妻をはじめとした色々なお店の方々やそこでつながった様々なご縁。そういった多くの人の目に留まると思うと、身が引き締まる思いだが、こういったつながりができたことは大変ありがたいことだと思う。
実はこのような人と人とのつながりは、個人の幸せに影響することが近年明らかになってきている。幸せのカタチは人それぞれだが、人の幸せに関する多くのデータを統計的に処理ができるようになったことで、どのような要因が幸せに影響するか判ってきたためだ。例えば、経済協力開発機構(OECD)が発表している「より良い暮らし指標(BLI)」には、より良い生活を実現するために必要な11の分野の一つに、社会的なつながりが含まれている。また国連が実施する世界幸福度報告では、人間関係や地域社会との関わりが主観的な幸福に必要となる要素として定義されている。このほかにも先進国では人とのつながりは所得よりも幸福度に影響するという研究もあるそうだ。日本でも内閣府が行っている「満足度生活の質に関する調査」で、満足度生活の質を表す指標群(Well-beingダッシュボード)が整理され、「交友関係やコミュニティなど社会とのつながり」が指標の一つになっている。
同調査の第4次報告書の中に、興味深いデータがある。コロナウィルスの感染が広がる前のデータではあるが、山梨県は社会とのつながりの満足度が全都道府県の中で最も高くなっている。これは本県で無尽やワイン会のように定期的に人に会う機会がよく設けられていたことが要因ではないかと筆者は考えている。コロナ感染拡大で難しくなってしまったものの、そういったつながりの機会を持てていたことはやはり県民の幸せにも影響を与えていたのではないだろうか。
人とのつながりはそこから生まれる信頼によって社会を円滑にするため「社会関係資本」とも言われている。山梨県は古くから無尽などを通じて、この資本を蓄積してきたことで多くの人を幸せにしてきたのかもしれない。そのような人とのつながりが、コロナ禍を乗り越えてこの先も続いていくことを願ってやまない。
(山梨総合研究所 主任研究員 前田 将司)