コロナ後遺症への対応
毎日新聞No.628【令和4年12月11日発行】
山梨県において、新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる「後遺症」)に関する調査結果が11月24日に公表され、回答者7,110人のうち約38%が「後遺症を疑う症状がある」との回答であった。後遺症はWHO(世界保健機関)により「新型コロナウイルス感染症に罹患した人に見られ、少なくとも2か月以上持続し、他の疾患による症状として説明がつかないもの」と定義されており、全世界で1億人以上の患者がいるとの報道もある。後遺症に苦しむ人々を救うにはどうすればいいのかーそこには様々なハードルがある。
まず、後遺症の認知度の低さが挙げられる。コロナの感染可能期間は、一般的に発症2日前から発症後7~10日とされており、感染可能期間後に後遺症を疑う症状があったとしても、他の人に感染させることはないとされている。しかし、咳などの症状が続けば公共の場や職場などで肩身の狭い思いをすることになるし、極度の疲労感倦怠感で出勤が困難な場合などでも、なかなか職場や学校の理解が得られないといった現実がある。
次に、診療体制の問題がある。後遺症そのものの研究が現在進行形で続けられている最中であることもあり、各自治体においても専門の診療科の整備などは進んでいない。冒頭の山梨県の調査においても、後遺症が疑われる症状があるにもかかわらず受診しなかった理由として「受診先が分からなかったため」との回答が18.2%と2番目に多くなっている。
さらに、受診できたとしてもまだ問題はある。後遺症については、原因やメカニズムがまだ未解明であることに加え、倦怠感・疲労感や集中力の低下などは検査しても数値等に現れないため、適切な後遺症認定や治療に結びつかないといったことが起こりうる。
今後は、後遺症についての正しい情報の周知を図るとともに、更なる症例の積み重ねによる原因究明と治療方針の確立が求められる。また、職場の理解に加え、休業補償や各種支援制度の適用など、制度設計の見直しも急務だろう。“見えないから分からない、数値に現れないから存在しない”のではなく、原因不明の症状に苦しんでいる人々が正しく理解され、救われる社会の構築が求められている。
(山梨総合研究所 研究員 山本 陽介)