山梨ならではの豊かさ


毎日新聞No.629【令和4年12月25日発行】

 12月1日、山梨総合研究所が取りまとめた書籍が「ぎょうせい」より出版された。タイトルは「山梨ならではの豊かさ~地方が注目される時代へ~」である。この書籍では、山梨県の特徴ある地域資源に注目し、それらと山梨県の豊かさとの関係を科学的に検証した。

 序章では、世の中のさまざまな価値観の変遷によって、地方が注目される時代になってきていることを示唆した。
 第1章では環境負荷に関する一指標である「エコロジカル・フットプリント」について解説した。20213月、総合地球環境学研究所は、都道府県別のエコロジカル・フットプリントを発表し、47都道府県の中で山梨県が最低であった。山梨県の環境負荷が日本で一番低い要因に迫った。
 第2章では日本でトップクラスを保っている「健康寿命」に注目した。ソーシャルキャピタル(地域におけるつながり)との関係等を議論し、山梨県における健康寿命の長さの背景を探った。
 第3章では「ものづくり産業」を取り上げた。山梨県は製造業の特化係数が日本のトップクラスである。山梨県におけるものづくり産業の変遷と今後について議論した。
 第4章では「農業」の現状を分析した。山梨県は果樹栽培が有名であるが、県の北西部に位置する北杜市の大規模農業や、有機農業に関しても事例を交えて説明した。
 第5章では「ワイン」の歴史をたどった。甲州市勝沼が日本におけるブドウ発祥の地であることはよく知られているが、その日本最古のぶどうの品種は甲州種であり、日本最古のワイナリーも山梨県に存在したとされている。山梨県で育まれたワイン文化と人々の生活を解説した。
 第6章では自然資源である「水」に注目した。山梨県はミネラルウオーターの生産量が断トツ日本一である。そんな水が山梨県民の生活にどのように関係してきたか、そして、山梨県民の豊かさにどのように影響してきたかを説明した。
 終章では「本著を読む視点と本著からの展開の視点」というタイトルで、書籍の意義や課題を、地方行政という視点も交えて議論した。

 読者への期待であるが、山梨県に住んでいる人には、山梨県ならでは豊かさを再認識してほしいと思っている。また、山梨県以外の人には、自分の住んでいる地域の資源、そしてそれらによってもたらされている豊かさを考える一助になることを願っている。

(山梨総合研究所 理事長 今井 久)