地域活性化へ甲信が強力タッグ


毎日新聞No.630【令和5年1月8日発行】

 1月初めの掲載ということで、明るい話題を。
 山梨県では、中部横断自動車道が静岡県側とつながり、約14カ月が過ぎた。並走する国道と合わせた交通量は増加し、コストコなどの企業進出や倉庫の立地などが相次いでいる。山梨の果物も、静岡で人気のようである。

 こうした中で、次に期待される道路整備が、山梨県北杜市~長野県佐久穂町間が未着工の中部横断自動車道北部区間の全線開通である。実現まで10年、20年とかかるかもしれないが、機械製造業が盛んな山梨県や長野県諏訪地域、伊那・飯田地域と北関東の工業集積地や茨城港を短時間で結ぶことになり、同地域の企業にとって新たな取引先の開拓が見込め、北米向けの玄関口の選択肢が一つ増える。東北からの観光客の誘致も追い風となろう。
 長野県飯田市と静岡県浜松市を結ぶ三遠南信自動車道の開通も注目である。山梨県から見るとなじみは薄いが、首都圏から山梨・長野・静岡を周遊する新たな観光ルートが誕生するかもしれない。
 交通インフラ整備に対象を広げてもう少し現実的な話となれば、リニア中央新幹線の開業に期待が高まる。4年後の開業予定は心もとないが、長野県の調査では甲府~飯田間が18分と想定されており、南信地域と山梨県はぐっと近くなる。新たな交流が始まろう。
 もともと山梨県と長野県諏訪地域等の間では他方向と違い急峻な地形に阻まれることなく往来があり、生活面や産業面でつながりが深かった。また、地域を広げて長野県の南半分をみても、文化面では類似点が多い感じである。

 近年、長野、静岡、新潟、山梨の日本中部に位置する4県が新たな経済圏をつくっていこうという「山の州構想」が動き出している。山梨県に住んでいると、中部横断自動車道でつながったこともあり静岡との連携が先行している感があるが、今後は長野との関係強化に関心が高まっていくだろう。ともに、海なし県でフルーツ王国、ワイン王国であり、移住人気も高い。両県民とも互いに最も親近感を抱いている県との分析もある。人口をはじめ規模では違いもあるが、両県の密な連携は地域活性化に大いに資するだろう。強力タッグを組んでの発展を期待したい。

(山梨総合研究所 専務理事 村田俊也)