郵便局への行政事務委託
山梨日日新聞No.17【令和5年1月28日発行】
人とのつながりが希薄となりがちな今般のコロナ禍の中で、一年の始まりに多くの人が年賀状のやり取りを通して、改めてつながりの大切さを感じたのではないだろうか。しかし、年賀状の配達件数は14年連続で減少している。
年賀状の配達を担う日本郵政㈱では、2021年10月から、通常郵便物の土曜日の配達休止等を実施している。その背景には、働き方改革や利用者ニーズの変化等とともに、特に20年度以降、デジタル化の進展に伴う郵便物の減少等による減益傾向が続いていることも挙げられる。
こうした同社の経営悪化の事態を受け、所管する総務省は、22年10月、情報通信審議会に対し「デジタル社会における郵便局の地域貢献の在り方」について諮問を行っているが、縮小する地域経済の中で課題の解決はなかなか難しい。
そもそも、同社は、全国47都道府県及び1357市区町村との間で包括連携協定を締結している(22年9月末現在)。
また、山梨県内ではまだ見られないが、全国165市区町村の562の郵便局窓口(22年6月末現在)で自治体が発行する証明書の交付事務を受託しており、転出届の受付等の事務に加え、マイナンバーカードの電子証明書の発行・更新等に係る事務も委託可能となっている。
さらには、国民健康保険や介護保険を始め、児童手当等の各種届出事務を受託している郵便局もある。例えば、長野県泰阜村では、全国初の取り組みとして、19年7月から、日本郵政㈱に地方公共団体事務の包括委託を行っており、村内2カ所の郵便局で村の支所業務が行われている。現在では、複数の自治体でも、支所・出張所等の廃止に伴い、その業務を郵便局に委託している事例が増加している。
この他、一部の郵便局では、児童や高齢者の見守りサービスの他、高齢者の買い物支援、空き家の活用支援など幅広く地域課題の解決に向けた取組を展開している。
ただし、既に委託を開始している自治体の例を見ると、年間委託料が郵便局社員1名分の人件費にも満たない事例が多く、日本郵政㈱の経営改善への貢献としては限定的のようである。
行政の窓口業務は、行政と住民とをつなぐ橋渡し的機能を有しており、特に過疎地域では重要なインフラである。人口減少・超高齢化、各種需要の減少、地域に必要なサービス水準の低下という悪循環が懸念される中で、今後の行政事務の業務委託をめぐっては、行政と郵便局それぞれの課題を踏まえつつ、地域で維持すべき住民目線に立ったサービス等のあり方について、行政、郵便局及び住民の三者で話し合うところから始めてみてはどうだろうか。
(山梨総合研究所 研究員 宇佐美 淳)