コロナ分類の5類移行
山梨日日新聞No.19【令和5年2月18日発行】
政府は1月27日、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけを5月を目途に季節性インフルエンザ並みの5類に引き下げる方針を発表した。5類となることの影響は、就業制限等の措置がとれなくなる、一般医療機関にも入院が可能となるなど様々だが、その中の一つに医療費が一部自己負担となるという変化がある。これまでは全額公費負担とされていたが、5類に引き下げられた場合には、インフルエンザなどと同様に診察やワクチン接種にあたっては保険適用以外の費用が自己負担となる。
いま、日本の家計は火の車だ。物価の高騰に歯止めがかからず、12月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月から4.0%の上昇となり、41年ぶりの高い上昇率となった。家計を圧迫する主な要因は食料品や電気・ガスなどの日常生活に要する経費だが、突発的に発生する医療費も大きな負担となる。家計に占める医療費の割合を算出するのは難しいが、2021年度家計調査における2人以上の勤労者世帯を対象とした1ヶ月の支出内訳をみると、保健医療費は約1万3千円で、支出総額の全国平均である約31万円の約4%を占めている。
こうした状況の中で危惧されるのは、医療費の一部が自己負担になることに伴う受診控えやワクチン接種控えだ。微熱程度の判断に迷う症状の場合に、お金がかかるので検査や受診をしないといったケースが考えられる。ワクチン接種についても、金銭面だけが接種するかどうかの判断材料ではないだろうが、有料であれば接種を見送るといった人は一定数いるだろう。こうした動きは感染者の増加や発覚の遅れにつながり、想定外の感染拡大にもつながりかねない。インフルエンザを例に考えると、発熱がみられる場合には医療機関を受診し、インフルエンザと診断された場合には症状が無くなるまで自宅で療養することは当然の行動だろう。コロナに関して言えば、これまで義務、あるいは強く推奨されていたものが自己判断に任せられるようになるという点において、個々人の責任が増すという考え方もできる。過度な対応は不要だが、今後も正しく恐れ、正しく対処していくことが重要である。
ウイルスを病原性や感染性の観点から適切に分類し、それに応じた社会体制を構築することは、わが国の医療にとって非常に重要で不可欠な作業である。政府は、上記のような懸念を踏まえ、医療費の公費負担の縮小は段階的に進めることとし、ワクチン接種についても無料接種の継続について引き続き検討していくとしている。政府は、今回の見直しの趣旨や内容を国民にしっかりと説明し、我々国民の側もその意味合いを正確に理解し、5類になったからといってウイルスの危険性を軽視するといった誤った認識を持って行動しないよう、正しい認識を持つ必要があるだろう。
(山梨総合研究所 研究員 山本 陽介)