それって実際どうなの?


毎日新聞No.633【令和5年3月19日発行】

 政府の方針により3月13日からマスクの着用が個人の判断に委ねられることとなった。とはいえ、新型コロナウイルス以外の理由で外せない方も多いだろう。そう、今年も猛威を振るっている花粉だ。日本人の4人に1人が花粉症ともいわれており、筆者も鼻づまりや目のかゆみで眠れない日があるほど苦しんでいる。

 この時期になると、ニュース番組などで花粉の飛散について報道されることが多いが、その中で気になるのは「今年の花粉量は去年の〇倍です!」と毎年言われているように感じることだ。報道では具体的な数値や年ごとの推移についてはあまり語られないが、毎年数倍ペースで増えているのであれば、私たちは花粉で前が見えなくなるだろう。仕事柄、データなどが気になってしまうため、実際のところどうなのか、少し調べてみた。
 調べるにあたっては、環境省が公開している花粉観測システムのデータによりスギ花粉の飛散数を確認した。なお、このシステムは既に稼働が停止しているため、公開されているデータの中で直近となる2016年から20年の5年間について、中部地方の都市部における2月から5月のスギ花粉飛散数の1時間あたりの平均値を見てみると、最も多かった18年では1立方メートルあたり40.3個、最も少なかった20年では9.9個と、年によってスギ花粉の飛散数に大きな差があることが分かる。比較すると18年は20年のおよそ4倍となっていることから、ニュース番組などにおける去年の何倍という表現もあながち間違っていないということだろう。ちなみに、データをさらに遡ると、05年のスギ花粉飛散数は1立方メートルあたり61.2個となっており、飛散数は年々増加傾向にあるわけではないようだ。これは花粉症の筆者を少し安心させてくれる結果である。

 今回のようにデータを見てみると、疑問が解消されたり、自分の思い込みに気づけたりすることもある。花粉のデータを含め、最近ではさまざまなデータがインターネットで比較的簡単に取得でき、データというものが身近になってきている時代だ。皆さんも何か疑問や気になったことがあれば、試しにデータを調べてみてはどうだろうか。

(山梨総合研究所 主任研究員 清水 洋介)