県版GDPで見る山梨経済


山梨日日新聞No.24【令和5年5月8日発行】

 県民経済計算とは、都道府県における年間の様々な経済活動の成果を、生産・分配・支出の三面の経済循環から体系的に把握し、経済規模、産業構造、県民所得水準など、地域経済の実態を総合的に表したものであり、国民経済計算(いわゆるGDP統計)の都道府県版に当たるものである。県民経済計算は算定に使用する各種統計等が公表されてから推計をするため、結果の公表は該当年度の概ね2年後となっている。

 山梨県が公表している「令和元年度県民経済計算年報」によると、県内総生産は名目で3兆5660億円、物価変動の影響を除いた実質で3兆5523億円となっている。産業別では製造業が名目で1兆612億円と全体の約3割を占めており、最もウエイトが高くなっている。また、県民所得は総額5474億円となっている。
 県内総生産の増減率である経済成長率は、対前年度比では名目でマイナス1.3%となったが、5年前の平成26年度と比べると県内総生産は約10%増加しており、全体としては県内総生産が増加傾向にあることが分かる。
 次に県内総生産から山梨県の経済規模を考えた場合、日本の国内総生産に占める比率は約0.6%となっている。また、都道府県別で県内総生産の順位を見ると、山梨県の県内総生産は第42位となる。これらの数字を一見すると、山梨県の経済規模は非常に小さいものと捉えられてしまうかもしれない。しかし、そもそも都道府県によって人口や可住地面積等が大きく異なっており、都道府県別の経済状況を適切に把握するためには、県内総生産を人口で除した1人当たり県内総生産で比較する必要があると考える。そして、山梨県の1人当たり県内総生産の順位を見ると、山梨県は都道府県別で第14位となり、他の都道府県と比べて見劣りするものではないことが分かる。

 なお、当面は新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、令和2年度から令和4年度にかけて県内の経済成長率は停滞することが想定されるだろう。一方で、新型コロナウイルス感染症の位置づけが5月8日から季節性インフルエンザなどと同じ5類に移行し、国内の経済活動が徐々に再開していくことが予想される。今後は、アフターコロナを見据えた経済対策や、デジタル等を活用した生産性の向上等により、山梨県でも経済の再浮上を目指す取り組みが活発化していくことに期待したい。

(公益財団法人山梨総合研究所 主任研究員 櫻林 晃)