将来推計人口の捉え方


毎日新聞No.637【令和5年5月14日発行】

 先月、日本の将来推計人口の最新結果が示された。同推計は、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が、2020年に実施された国勢調査の結果を基に行ったもので、それによると、50年後の2070年の総人口は、2020年時点の約7割である8,700万人に減少するとされている。
 同推計の都道府県及び市区町村別は、本年中に公表される予定となっており、現時点では、2015年に実施された国勢調査の結果に基づく推計が最新のデータである。

 それによると、2015年から25年後の2040年には、山梨県の総人口は641,932人、長野県は1704,857人に減少すると推計されている。それに対し、各県の総合計画では、人口減少対策を講じることで減少幅を抑えることを目標として掲げている。
 例えば、2040年における山梨県の目標人口は699,000人(社人研推計比で57,068人増)、長野県は1755,000人(同5143人増)となっており、両県ともに社人研の推計よりも5万人強の人口維持を目標として設定している。
 では、実際の各県の総人口はどうであろうか。いずれも202341日現在で、山梨県は796,231人、長野県は2007,647人となり、山梨県は19804月以来約43年振りに80万人を割り込んだ。長野県も、社人研の推計では2025年に200万人を割り込むとされているが、現状のままの推移でいくと本年中には200万人を割り込む可能性がある。現に隣の岐阜県では、2020年の国勢調査の結果で、約40年振りに200万人を割り込み、1979,781人となっている。

 確かに、人口の減少は、社会全体の維持をはじめ、生産年齢人口の減少に伴う労働力の不足や、それに伴う経済への影響、他方で老齢人口の増加に伴う社会保障制度の維持など、様々な課題を生み出すことが懸念される。
 しかし、どのように推計しようと、出生数や死亡数、転出入など、現在の人口動態を踏まえた上で将来人口を推計した場合、減少することは避けて通れない。
 また、現在人口が増加している自治体も、他自治体からの転入によるケースが多く、結局は自治体間における人口の奪い合いの様相を呈している。

 今後は人口の推移に着目しつつも、減少そのものの事象や一時的な転入超過などに一喜一憂せず、減少していく中でも、各世代の住民が居心地よく暮らしていけること、そのために、各自治体では、行政と住民との協働のほか、各地域における世代を超えた住民同士のつながりの構築などについて考えることを優先していくべきではないだろうか。

(山梨総合研究所 研究員 宇佐美 淳)