「経験」をどう生かすか


山梨日日新聞No.25【令和5年5月29日発行】

 新型コロナウイルス感染症が流行して早3年。これまで新型コロナウイルス感染症は、「新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)」とされていたが、令和5年5月8日に、「5類感染症」へと引き下げられた。これによって、医療体制が平時に戻るほか、国や自治体が個人や企業に行動制限を課すことがなくなり、個人の判断に委ねられることとなった。この約3年間、誰しもが新型コロナウイルスの影響を受けてきただろう。これからも安心せずに、感染対策を講じるべきではあるが、ひとつの区切りとして一息つくことができた人は多いと思う。「5類感染症」への引き下げが期待される中でのゴールデンウィークは、久々の旅行や観光などを楽しんだ方々が多くいたのではないだろうか。

 観光庁から出された「旅行・観光消費動向調査」によると、20231-3月期の速報値として、日本人国内延べ旅行者数は113万人と発表された。コロナ禍前の2019年同期比で17.1%減であるものの、前年同期比で55.2%増と、旅行者数は回復傾向にあり、4-6月期の実績がどんな数値となるか楽しみである。
 山梨県においても、今年のゴールデンウィーク期間中に山梨県内の主な観光施設を訪れた客数は116万人超となり、コロナ禍では最多の観光客数となったことが県の集計でわかった。過去最少を記録した2020年の37,575人と比較すると、31倍あまりの大幅な上昇となり、昨年と比較しても13.1%の上昇となっている。最大10連休だった19年は181万人超、それ以前の17年、18年はどちらも140万人超であることから、今後、その規模にまで回復することは大いに期待できる。
 しかし、新型コロナウイルス感染症は「5類感染症」へ引き下げられたものの、完全に収束したわけではない。新型コロナウイルス感染症によって生活様式が一変したが、「コロナ禍を経験したからこそわかったこと、できたこと」というものはあったと思う。
 筆者が期待するのは、コロナ禍を経験した今、「この経験を、これからの生活にどう生かしていくか」である。コロナ禍が過ぎたとしても、必ずしもすべてをコロナ禍前に「戻す」必要はない。例えば、混雑を避けるために導入した時差出勤やテレワークといった働き方の目的の第一は、「感染拡大防止」のためであったが、コロナ禍が過ぎたとしても働き手にとっては働きやすくなる制度である。一方で、会議はオンラインでなく、顔と顔を合わせて話すことこそ気持ちが伝わる、意義があるというのも重要で理解できる。大事なのは、「どちらがより良いかを選択する」ことだ。

 山梨県は、富士山をはじめ自然に囲まれながら家族で住むことができ、仕事はテレワークで、必要であれば都心まで1~2時間程度で移動することのできる絶好の環境である。新型コロナウイルス感染症が「5類感染症」に引き下げられ、生活様式を考え直す今、山梨県の良さを再度アピールできる絶好の機会ではないだろうか。

 

参考:山梨県「令和5年ゴールデンウィーク調査結果」

(公益財団法人山梨総合研究所 研究員 藤原 佑樹)