非営利という名の柵(しがらみ)


山梨日日新聞No.27【令和5年7月3日発行】

 今となっては聞き慣れた「NPO(特定非営利活動団体)」という言葉であるが、19983月に特定非営利活動促進法(いわゆる「NPO法」)が公布され、今年で25年の節目の年を迎える。その後、20116月に法改正が行われ、税制上の仕組みを見直すことでNPO法人への寄附を促すため、認定NPO法人制度が開始された。2023430日現在、全国で50,310法人が、山梨県では487法人がNPO法人として認証されているが、これらはあくまで法人として活動しているNPOの数であり、法人格を取得していないNPO(いわゆる任意団体)も多く存在する。

 NPO法人の運営実態は厳しい。20218月に内閣府が全国のNPO法人を対象に行った実態調査の結果によると、組織が抱える課題の第1位は「収入源の多様化」で、第2位は「人材の確保や教育」となっている。つまり、多くのNPO法人が運営にあたって、資金と人材の不足が大きな課題となっている。
 また、組織の主たる収入源は、会費収入や寄附金といった、NPO法人の活動の趣旨に賛同する方からの収入は少なく、事業収入や助成金・補助金、委託、指定管理者としての業務など、行政からの収入が大きな割合を占めていることが分かる。
 なお、寄附者に対する税制上の優遇措置が適用される認定NPO法人に対し、「認定」が付いていないNPO法人の運営実態は更に深刻な状態にある。収入の内、会費や寄附金については全体の3%にも満たず、事業収益が80%強を占めている。中でも寄附金にいたっては、個人からの寄附金がない組織が全体の50%強、法人からの場合で70%強という状況である。
 一方、財政上の制約から役員以外の職員が誰もいない法人が30%弱あり、その場合、役員自身が法人の運営を行いながら、事業活動を行っている状況である。税制上の優遇措置が可能となる「認定」を得るためには、様々な要件があり、活動を開始したばかりや小さなNPO法人には大きな負担となる。
 以上がNPO法人をめぐる実態の一端であるが、NPOによる活動は、福祉や環境、教育など、実に様々な分野に及んでおり、今では行政によるサービス提供では補いきれない部分の多くをNPOが担っているとも言える。

 では、こうしたNPOからの支援やサービスを受ける側の住民の意識はどうか。若干古い数字となってしまうが、201812月に内閣府が行った世論調査結果では、NPOという存在の認知度自体は約90%に達しており、活動が広く認知されているとともに、その支援やサービスに対する満足度も向上し、信頼度も約70%まで高まっている。
 ところが、そうした高い認知度や満足度、信頼度を得ているにも関わらず、NPOに対する支援は十分ではないと感じる。その大きな要因の1つとして、収益を生み出してはいけないと誤解させる「非営利」という言葉への理解の不足が挙げられる。

 NPO法が成立して今年で25年。今後は「非営利でも運営に必要最小限の収益の確保が必要」という理解の普及を図り、NPOによる活動に賛同することはもとより、その活動を支援(金銭面のみならず人員面も含めた支援)していくことで、社会全体でNPOの持続的な発展に努めていく必要がある。

(公益財団法人山梨総合研究所 研究員 宇佐美 淳)