孤独・孤立を防げ


毎日新聞No.643【令和5年8月6日発行】

 つい先日の話だが、知人と食事を共にする機会があり、コロナ禍で久しく会えなかったことから会話が弾んだ。その中で、共通の知人についての話題に及んだが、現在施設に入所しており、当面会うことが難しいと聞き、大変ショックを受けた。
 何故そのような事態になったのか。その知人は、配偶者と離婚して独り身となり、アパートで一人暮らしをしていることは知っていたが、元々人との交わりが得意ではなく、コロナ禍で次第に人付き合いが無くなる中で、離婚という要因も重なり、精神的に塞ぎ込んでいたとのことであった。

 2020年(令和2年)から始まった新型コロナウイルス感染症の拡大により、社会情勢が大きく変化した中で、他者との接触機会は大幅に減少した。こうした影響を受け、人との繋がりの希薄化が強まったことで、孤立と孤独という言葉を耳にする機会が増えた。
 日本赤十字社「新型コロナ禍と若者の将来不安に関する調査(2021年)」によると、高校生・大学生を対象にした調査結果として、コロナ禍で生じた若者の気持ちの変化について、「何もしたくなくなる、無気力」、「孤独を感じ1人でいるのが不安」、「自分に価値を感じない、他者から必要とされない」という項目について回答率が高いことが公表されており、他者との繋がりが無くなったことが、生きる意欲や自己肯定感の喪失を助長したと推察できる。

 では、こうした事態にならないようにするためには、どうしたらよいか。まずは、隣人や地域コミュニティに繋がりを求めればいいという意見もあるが、実際にそうした状況に陥っている当事者が他者との接触を望むだろうか。すべての地域住民が、隣人や地域コミュニティと繋がりを求めているのかと言えば、残念ながらそこまで期待することは難しい。現実には、あいさつ程度で済ましたいという意見が多くあり、繋がりは先細る一方である。

 孤独・孤立の要因は様々だが、問題解決を隣人や地域コミュニティとの繋がりだけに委ねることは、不可能であると言わざるを得ない。助けてほしい、寂しい、会話がしたい、そうした声を拾うことができる、孤独・孤立を防ぐための環境づくりに自治体と民間が協力し、支援体制を構築することが必要ではないだろうか。

(公益財団法人 山梨総合研究所 研究員 山本晃郷)