これからの空き家対策
毎日新聞No.645【令和5年9月3日発行】
皆さんの住んでいる街で、なんとなく空き家が増えてきたなと感じている人は多いのではないだろうか。実際、空き家の数は昭和63年の394万戸から平成30年には846万戸へと増加しており、平成の間に2倍以上に増えている。空き家問題は連 日ニュースを賑わせており、重要な社会問題であるという認識は広まっているように思う。
立地がよく、新しくて綺麗な物件であれば、売却・賃貸・カフェ等への用途転用など様々な方策が考えられるが、そういった資産価値の高い物件は多くない。平成30年住宅・土地統計調査では、上記のような活用が検討されていない「その他の住宅」の割合が41.1%となっており、調査開始以降初めて4割を超えている。
その中でも、高齢者が居住する住宅は比較的築年数が長く、老朽化も進んでいる場合が多い。近年では単身・夫婦のみで居住している世帯も多く、そういった物件で居住者が亡くなった場合、住む人がいなくなり、利活用が図られずに結果として放置空き家となってしまうといったケースもあると考えられる。
とはいえ、現実には空き家をそのままにしておくことには所有者にとってデメリットしかない。政府は平成27年に「空き家等対策の推進に関する特別措置法」を施行し、適切な管理が行われていない空き家を「特定空き家等」に認定し、行政からの助言や指導・勧告等の措置を行うことを可能とした。これらの指導等に応じない場合、固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなる、行政が空き家を強制的に撤去し、かかった費用を請求されるといった事態も起こりうる。
売却や用途転用が難しいということであれば、解体、もしくは現状維持をいかにして行うかが重要となるが、こうした「放置していると大変なことになる」というメッセージだけでは、空き家を所有する人々を動かすには不十分ではないだろうか。例えば、「早期に解体する場合には、解体費の補助を手厚くする」「リフォームやリノベーションへの支援を拡充する」といったシステムを構築すれば、空き家を放置せず、何らかのアクションを起こす人は増えるだろう。インセンティブを与えることで、当事者がより前向きに空き家解消に向けて動き出せるような仕組みづくりが、これからの空き家対策には必要ではないだろうか。
(公益財団法人 山梨総合研究所 主任研究員 山本陽介)