地域おこし協力隊の未来


毎日新聞No.647【令和5年10月1日発行】

 地域おこし協力隊が2009年度に創設され、今年で15年目の節目の年を迎える。人口減少や高齢化等の進行が著しい地方において、地域外の人材を積極的に誘致し、その定住・定着を図り、各種地域協力活動に従事する役割を担うことを目的に、隊員は概ね13年の期間で都道府県または市区町村から委嘱される。
 令和4年度のデータでは、全国1,118の団体で計6,447人の隊員が、山梨県では953村で計115人、長野県では県及び172133村で計421人、静岡県では158町で計102人がそれぞれ活動している。
 隊員の年齢構成は、20代及び30代が68.4%で、比較的若い世代による活動が目立つ。なお、これまで任期を終了した隊員のうち65.4%がその後も当該自治体に定住している。
 こうした現状からすると、その目的は十分に果たしているものと思われるが、その実態としては、受入先自治体で就職したり、新たに起業するまでには至らず、元の居住地に帰ってしまう事例も散見される。

 その原因の1つとして、隊員の希望する活動や目指す地域像と、そこで長年生活してきた住民の既存の活動や理想とする地域像との間にギャップが生じ、結果的に隊員が定住せず元の居住地に帰ってしまうとの見方がある。
 隊員の約7割が2030代であり、その活動の幅は広く地域活動への熱意も高いものの、受入先の地域の現状は、それとは逆に高齢化が進み、集落自体の維持存続が難しい状況にある。
 こうした隊員と地域との関係性について、一般社団法人移住・交流推進機構が2023年に実施した調査結果によると、隊員の相談先の多くが受入自治体の行政職員であることが分かっている。しかし、そうした支援体制だけでは、職員個々人のノウハウ等によって隊員の去就が左右されてしまうことが危惧される。

 そこで、現在18道県で設置されている隊員OBOGによるネットワークが、全ての隊員に対する “中間支援”機能を果たすことで、より充実した支援体制が構築できるものと考える。今後は他府県への波及が期待される。
 こうした若者と地域とのミスマッチが生じないよう、インターン等の入口部分での対応も引き続き求められるが、一部に制度疲労が見られる本制度について、実際に本格的な活動を開始した後の支援体制の強化など、制度自体の本格的な見直しが求められているのではないだろうか。

(公益財団法人 山梨総合研究所 研究員 宇佐美 淳)