統計データを活用しよう


山梨日日新聞No.34【令和5年10月30日発行】

 統計データには、国や県などの行政機関が人口や産業等の実態を調査して作成する公的統計から、企業活動によって取得される位置情報やPOSデータなど、地域や経済に関する統計まで様々なものがある。企業や自治体が統計データを有効に活用することで、ビジネスの現場や自治体の政策形成等において、顧客や住民のニーズに基づいた実効性の高い事業や施策を効果的に実施することが期待される。

 統計データは、データを時系列や地域別に比較することで、その地域の特徴や状態を把握することができる。例えば、内閣府が取りまとめている『県民経済計算』(2020年度)をみると、山梨県や隣接する静岡県は県内GDPに占める製造業の割合が3割以上となっており、全国平均の20.9%と比べて高いことが分かる。一方で、経済産業省が実施した『経済構造実態調査』(2021年)を見ると、製造品出荷額で山梨県は「生産用機械」「食料品」「電子部品」が高いのに対し、静岡県は「輸送機械」「電気機械」「化学工業」が高く、製造業(ものづくり)を主要産業としている県であったとしても、得意としている分野が異なっていることがわかる。そのため、山梨県内の自治体や企業が静岡県側と連携した産業振興施策や事業展開を検討する場合には、お互いの地域の現状や強みを統計データで知ることで、勘や経験だけでなく客観的な数値に基づいた議論ができるだろう。

 今日の自治体の政策形成では、統計データを活用して政策の効果測定や目的設定等を行う『EBPM(エビデンスに基づく政策立案)』が推進されるようになってきている。また、ビジネスの現場においても、経営者や現場担当者の主観や先入観に左右されないデータに基づいた戦略立案や意思決定を行う『データドリブン経営』が注目されている。これらはいずれも、変化の激しい時代の中で限られた経営資源を有効に活用することが求められるようになってきていることが背景にある。また、IoTAIといったデータの収集・分析を行う技術が進歩したことで、ビッグデータから新たな価値や知見を生み出すことができるようになったことも理由として挙げられるだろう。

 それでは、統計データを有効に活用していくにはどうすれば良いだろうか。まずは情報源となる統計データを正確かつ詳細に収集し、蓄積したデータを分析することが重要となる。最近は自治体によるオープンデータの公開が進んでいるため、オープンデータから地域の状況を可視化して客観的に把握することが考えられる。また、デジタル技術を活用して自社の企業活動(生産・販売など)のデータを独自に蓄積・可視化して、業務効率の改善を図ったりすることも考えられるだろう。そして、統計データを活用するためには、多くの人が統計データの活用に関心を持ち、統計に対するリテラシーを高めるとともに、統計データの分析手法や活用方法について熟知した人材の育成をしていく必要があるだろう。

出典:経済産業省「2022年経済構造実態調査(製造業事業所調査)」

(公益財団法 人山梨総合研究所 主任研究員 櫻林 晃)