Vol.303-1 NPOによる社会課題解決や価値創造のために求められるもの ―全国の先進的事例と日本ファンドレイジング協会による取組等を踏まえて―
認定特定非営利活動法人日本ファンドレイジング協会
社会的インパクトセンター チーフディレクター
松島 拓
1.はじめに
「全国にNPO法人は、コンビニと同じくらいあるんです」。筆者がNPO法人で仕事を始めた2013年頃、NPO法人がいかに身近にあるかを伝えるためによく使う言葉だった。NPO法(特定非営利活動促進法)が1998年に施行して以来、NPO法人の認証数は右肩上がりであったが、2014年以降は5万法人程度と横ばいであり、ここ数年は微減傾向にある。この背景として、代表者の高齢化や事業継承問題により解散数が増加していることが挙げられるが、社会課題の解決に関わる主語が必ずしもNPOでなくなったことも背景の一つかもしれない。
以下、本稿では、まずNPOを取り巻く環境として、NPOが担う社会課題解決に取り組む主体の多様化を背景に、NPOが担う領域やNPOがおかれている状況について取り上げる。次に、NPOによる社会課題解決や価値創造に向けて、NPOがとり得る戦略とは何か、事業実施に必要な資源を得るためには何ができるか等、日本ファンドレイジング協会による各種取組等について取り上げる。そして、NPOを支える環境として、資金と人の観点から支援のあり方について考える。
2.NPOを取り巻く環境
2-1.社会課題解決に取り組む主体の多様化
筆者は2013年に大学を卒業した後、福岡市のとあるNPO法人で仕事を始めた。当時は社会課題の解決に携わる仕事と言えば、NPOでの仕事が中心であったが、100万人都市の福岡市であっても、新卒でNPOの仕事をしている人は片手で数え切れるほどであった。そこでは、「社会課題の解決に携わる仕事=自己犠牲的な仕事」という印象が強く、「ボランティアではないのか」「給与はもらえるのか」といった質問をよく受けたものだった。
それから10年間で、NPOを取り巻く環境は大きく変化しつつある。特に新型コロナウイルス感染症の流行による影響で、私たち一人ひとりが社会からの孤立や断絶を経験し、「社会」というものを一層身近に感じるようになったからかもしれない。また、生まれた時から課題先進国としての日本で暮らしてきた若い世代にとっては、社会課題に対する関心は高く、例えば、株式会社日本総合研究所が2020年に、全国の中学生、高校生、大学生を対象に実施した「若者の意識調査(報告)― ESGおよびSDGs、キャリア等に対する意識―」によれば、環境問題や社会課題に取り組んでいる企業で働く意欲(「とてもそう思う」、「ややそう思う」)があると回答した若者は、全体で47.2%となっている(日本総合研究所2020:46)。
このように社会課題への関心が高まる中で、昨今その解決に取り組む主体が多様化している。一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター『ベンチャー白書2021』によると、国内のスタートアップにおいて、起業の動機(複数回答可)は「自分のアイデアや知識・技術を活かしたい(59.9%)」や「経済的な成果を得たい(25.5%)」などの選択肢を上回り、「社会的な課題を解決したい、社会の役に立ちたい」(73.7%)が最も高くなっている。実際に社会課題の解決と経済的な成長を両立し、ポジティブな影響を社会にもたらすインパクトスタートアップに対する関心も高まっており、先日、経済産業省が設置した、官民によるインパクトスタートアップ育成支援プログラム「J-Startup Impact」においては、ロールモデルとなりえる30社が選定されたところである。100年先もつづく農業の実現を目指し、環境負荷の小さな農業に取り組む新規就農者と消費者をつなぐ株式会社坂ノ途中や、障害のある当事者の視点からユニバーサルデザイン等に関するサービスを提供する株式会社ミライロといった企業が選ばれている[1]。
また、株式会社ボーダレス・ジャパンによる、起業や経営に必要な資金やノウハウを共有し合う「カンパニオ」という仕組みにより、世界13カ国48事業でソーシャルビジネスを展開する新しいモデルも生まれている[2]。
このように社会課題の解決に取り組む主体が多様化するにつれて、10年前とは異なり、社会課題の解決に関わる主語がNPOでは必ずしもなくなりつつある。また、社会課題への関心の高まりという追い風がある一方で、後述するように多くのNPO法人は小規模かつ不安定な財政基盤のゆえ、適切な人材を確保することができず、結果的に代表者の高齢化や事業承継といった問題に直面しているとも考えられる。
2-2.NPOが役割を担う領域
このように大きく変容する社会の中において、NPOだからこそ果たせる役割は何だろうか。ここで、NPO法人クロスフィールズ代表理事・小沼大地氏による整理[3]を取り上げたい。同団体は留職プログラムなどを通じて、海外や国内の社会課題の現場と働く人をつなぐことで、課題解決とリーダー育成の両方を目指す組織である。
小沼氏は図表1で示すように、社会課題の解決に関する領域を「①ソーシャルイノベーション領域」、「②サステナビリティ経営領域」、「③公助/共助領域」という3つの区分に整理している。そのうえで、すべての社会課題をビジネスによって解決することは不可能であり、NPOは市場経済とは異なるアプローチでの課題解決が目指される領域において役割を果たせるのではないかと提示している。
図表1 社会課題の解決に関する3つの領域
小沼氏による整理を踏まえると、これまでNPOは主に「③公助/共助領域」のうち、公助領域が担えないような問題の個別性と難易度が高い領域で、事業を展開し、その領域の社会的認知や拡大を担ってきた。まさにこの領域こそ、他の主体には担えないところであり、参加と協力という仕組みによりNPOが取り組んできた領域であろう。
2-3.NPO法人がおかれている状況
ここで全国のNPO法人がおかれている状況をみてみたい。内閣府が2021年1月~3月の期間で全国のNPO法人の内7,347法人を対象に実施した調査結果によると、まず、事業規模に関して、収益合計が1億円以上であるNPO法人は、認証法人で5.4%、認定・特例認定法人で17.8%となっている。認証法人の50%は500万円以下であり、10%超は収益合計額が0円と事実上の休眠状態にあると言えるだろう。
また、常勤の有給職員数は、認証法人で中央値が1人、平均値が4人、認定・特例認定法人で中央値が2人、平均値が6人となっており、半数以上のNPO法人は0~2人の職員で運営されていることが分かる。
図表2 特定非営利活動事業の収益合計
また代表者の年代を見てみると、67.2%の認証法人、72.9%の認定・特例認定法人において、代表者が60歳以上である。調査対象は異なるものの、新規開業企業において60歳以上の割合はわずか7.5%であり、平均年齢が43.5歳ある[4]ことを考えると、NPO法人における代表者の高齢化や、体制の循環が起きていないことが示唆される。
図表3 代表者の年代
さらに認定NPO法人の内訳をみてみると、収益額が10億円以上の組織はわずか0.9%であり、かつそれらが認定NPO法人1,176法人の総収入額の41.9%を占めていることが分かる。1億円以上の組織まで広げてみてみると、17.5%の法人が総収入額の79.6%を占めており、小規模法人と中規模・大規模法人においては大きな格差がある。
図表4 認定NPO法人の収入規模
この収入規模の二極化については、NPO法人関西NGO協議会による『NGO研究会報告書「日本の国際協力NGOの資金調達リデザイン化と財務内容の強化」』でも指摘されている。同調査は、特に国際協力NGOを対象に絞って行われたものであるが、大変示唆の多い内容となっている。同調査によると、1億円未満の小規模団体では事業の縮小傾向にある一方で、中規模・大規模団体では拡大傾向にある。つまり、より大きな組織はより拡大し、より小さな組織はより縮小している様子が窺える。
図表5 経常収益額別年比平均成長率(2018年度から2021年度)
1億円未満の小規模団体が大多数を占めることを考えれば、多くの組織において、財源の確保は課題であろう。実際にNPO法人が抱える主な課題として、「人材の確保」「収入源の確保」が挙げられている。事業実施に必要な資源を安定的に獲得できなければ、適した人材の確保どころか、事業を通じて社会課題解決や価値創造を実現することは難しいだろう。
図表6 各法人が抱える課題(上位4項目)
しかし、こうした状況は、NPOが必ずしも自助努力を怠ってきたというわけではない。前述のとおり、NPOは経済性合理限界曲線を超える領域を担ってきた。例えば、経済的に困窮状態にあり社会的に孤立した方に対して何らかのサポートやサービスを提供したいと考えても、対象者本人からその対価を得られないことが多い。そのため、NPOは「第一の顧客」である事業の受益者とは別に、その事業を行うために必要な資金の出し手である「第二の顧客」を探さなければならない。
言い換えれば、NPOは事業を通じて社会課題の解決や新しい価値の創造を実現することと、事業実施に必要な資源を獲得することという2つの取り組みを同時並行で、かつ成功をおさめなければならない。これは「言うは易く行うは難し」である。
3.NPOによる社会課題解決や価値創造に向けて
NPOは限られたリソースを活用しながら、どのように社会課題解決や価値創造を実現することができるだろうか。ここでは(1)NPOが取りうる戦略は何か、(2)事業に必要な資源を得るために何ができるか、(3)社会課題の解決のために何ができるかという3つの問いについて考えたい。
3-1. NPOが取りうる戦略は何か
一般的には、事業をどうしたら継続できるか、あるいは拡大できるかを考えがちであるが、NPOにとってそれらの戦略は、必ずしも最適解ではないかもしれない。社会からの関心を得られていない社会課題であれば、解決策の有効性や成果を実証し、その大規模で広範囲な導入の意義を示すことで、行政や政策へのアドボカシーを行うこともできる。あるいは、他組織でも実施可能な事業モデルを構築・展開することで、組織の枠を超えて、他組織と一緒に事業の拡大を進めていくことも可能であろう。
また、社会課題の解決と事業性を両立するために、事業収益化を目指すことも一案である。ただ、もともと経済的合理性が低い領域であり、かつ投資資金が限定的なNPOにとって、十分な収益を得ていくことは容易でないことに留意すべきである。そこで、収益化しやすい領域と収益化しにくい領域を複数の法人で担っていくこともできる。例えば、NPO法人LivEQuality HUB は、安心できる住まいを安価に提供する事業を行う株式会社LivEQuality大家さんと、建設会社であり不動産運営を行う千年建設株式会社とのグループにより、シングルマザーの居住支援事業を行っている[5]。NPOだけでは解決が難しい事業を、異なる主体がそれぞれの強みを生かし、同じ社会課題の解決を目指している。
近年、企業におけるサステナビリティ経営への転換が求められている中で、これまで社会課題の解決に最も近い現場で取り組んできた立場だからこそ、企業のガイド役として役割を果たしていくこともできる。例えば、認定NPO法人ACEは、カカオ・チョコレート産業における児童労働問題の解決に向けて、大手製菓メーカーとの協働によりカカオ生産地における児童労働の撤廃に向けた活動や、児童労働のないカカオによるチョコレートの生産を推進している[6]。
世界を見てみると、NPOによるインパクト投資という新しい動きもある。セーブ・ザ・チルドレンは、世界のこどもを支援するNGOとして知られているが、2020年にインパクト投資ファンドを設立し、何百万もの子どもたちが直面している問題の解決方法を根本的に変革するスタートアップ企業へ投資を行っている。教師が質の高い授業を受講できるためのサービスを提供する企業や児童虐待のリスクを検知するサービスを提供する企業などに投資を行っており、最も複雑な問題に対する解決策を加速することを目指している[7]。
これらの事例から共通して言えることは、解決を目指す社会課題の特性や領域をとらえたうえで、既存の役割にとらわれず、最適な戦略を描くことが重要となるということである。
3-2. 事業に必要な資源を得るために何ができるか
NPOによる活動のための資源について、個人や法人、政府などから集める行為を総称して「ファンドレイジング」という。このファンドレイジングの推進に全国で取り組む組織が、筆者の所属する認定NPO法人日本ファンドレイジング協会である。同協会は、2009年に寄付・社会的投資が進む社会の実現を目指して設立された。民間非営利組織のファンドレイジングに関わる人々と、寄付など社会貢献に関心のある人々のためのNPOとして、認定ファンドレイザー資格制度やファンドレイジング・日本、子ども向けの社会貢献教育、遺贈寄付の推進、寄付白書の発行などに取り組んでいる[8]。
ファンドレイジングは、もともとは「Raising Fund」(資金を集める)という言葉が名詞化した名称である。狭義には寄付金のみを対象としたものを指すが、一般的には寄付に加え、会費、助成金、補助金などの「支援的資金」集めも含むとされている。さらに広義の意味では、民間非営利団体の財源獲得(事業収入、融資、社会的投資なども含む)を全体として総称する言葉として用いられる。
非営利組織にとってファンドレイジングに取り組む意味は「財源を得るための手段」にとどまらず、自団体が取り組む社会課題への理解と共感を広げていくことを通じて、社会からの様々な主体の参加を生み出し、社会課題の解決を図っていくものである。
そのため、ファンドレイジングは、財務や資金調達のことのみにとどまらず、事業や組織といった全体的に取り組み、一緒に成長させていくことが大事である。具体的に戦略的なファンドレイジングを進めていくためには、まず自団体の潜在力と取り巻くマーケットを把握し、実現したい状態を描く。そのうえで、マーケットの中で自組織がどこにポジショニングするかを明確にし、財源・事業・組織から構成される戦略を設計することが求められる。
図表7 財源・事業・組織の成長
同協会はファンドレイジングを体系的に学び、ファンドレイジングの専門人材である「ファンドレイザー」を生み出すための認定ファンドレイザー資格制度を運営している。NPOはこうした専門人材も活用しながら、自団体が取り組む社会課題への理解と共感を広げ、社会の様々な主体による参加と協力を生み出していくことが必要である。
3-3. 社会課題の解決のために何ができるか
社会課題の解決や価値創造の実現を目指す際に、事業や取り組みによってどんな変化や価値が生まれるかを理解することが求められる。この変化や価値のことを「社会的インパクト」といい、短期・長期にかかわらず、事業や活動が社会や環境に対してもたらす変化のことを示す。この変化と価値に関する情報を得ることにより、どうすればよりよい事業が実施できるか、どのように改善していくことができるかということが検討できる。このように社会的インパクトの向上を目指す体系的な活動のことを「社会的インパクト・マネジメント」という。
社会的インパクト・マネジメントは、具体的には「計画」「実行」「効果の把握」「報告・活用」という4つのステージと、7つのステップから構成される。
図表8 社会的インパクト・マネジメントのステージとステップ
まず最初のステップとして、社会的インパクト・マネジメントを実践する⽬的を設定する。そのうえで、「計画」ステージにおいては、事業が取り組む問題と課題の分析(ステップ2)、事業や取り組みの目的・目標を実現するための戦略の策定(ステップ3)、事業の具体的な計画と事業の成果を確認するための評価計画の策定(ステップ4)を行う。
次に、「実行」ステージでは、事業や取り組みの実施とモニタリングを行いながら、事業の実施過程や成果に関するデータを収集する(ステップ5)。それらのデータを「効果の把握」ステージで分析・検証する(ステップ6)。最後の「報告・活用」ステージでは、分析結果を踏まえて改善のための意思決定に活用したり、様々な事業の関係者に公開・報告しコミュニケーションを図るなどを行う。
このように社会的インパクトを可視化し、継続的かつ発展的にその向上を目指すことにより、社会課題の解決や価値創造の実現を進めることができる。
4.NPOを支える環境
前節においては、NPOが取り組む「戦略」、「ファンドレイジング」、「社会的インパクト・マネジメント」を解説したが、これらの取り組みを資金と人の両面から支えることも重要である。
4-1. 資金で支える
NPOを取り巻く資金の動きを見てみると、2020年の個人寄付総額(ふるさと納税を除く)は5,401億円で、うち宗教法人や自治会等への寄付を除いた金額は、2,628億円となっている。助成財団による助成額は、2019年には1,195億円となっている。2019年からは、10年以上取引のない休眠預金を社会課題の解決や民間公益活動の促進のために活用する制度である「休眠預金活用事業」が始まり、2023年9月までに、累計1,057団体へ260.5億円の助成が実施されている。また、民間の助成財団を見ても、子ども・家族の社会課題解決に助成する「みてね基金」[9]、女性のSTEM教育を支援する「山田進太郎D&I財団」[10]など、上場等で成功した起業家によるフィランソロピーの取組みも拡大している。こうした動きにより、徐々にソーシャルセクターへの資金流入は増えているだろう。
一方で、助成金はその名のとおり「成長を助けるお金」であるべきだろうが、成長を遅らせているケースもある。特に日本においては管理的な思考が強く、何にいくら使ったのか、何を行ったのかが重視される傾向にある。そのため、柔軟な資金利用が認められない、計画からの変更ができない、事業費の一部や人件費を計上できないなど、強すぎた管理志向の結果、日々変化する事業の現場において柔軟に対応することが難しくなり、結果的に社会的インパクトの創出が阻害されることがある。
しかし、社会課題解決や価値創造の実現を目指す事業において、重要な問いはどのような社会的インパクトを生み出したかである。
管理志向に対するアプローチとして、「信頼にもとづくフィランソロピー(Trust based philanthropy)」がある。資金の提供者とNPOとの相互の信頼に基づく考え方であり、複数年の使途を指定しない資金提供、申請と報告の簡素化、相互の透明性の確保、非資金的な支援の提供などの特徴を有する。例えば、「みてね基金」の「ステップアップ助成」では、社会や地域の課題解決に取り組む非営利団体への期待が高まるなかで、団体の人材育成や組織づくりなど、重要度は高くとも緊急度の低い課題に取り組むために使途の柔軟な資金と非資金的な支援を提供している。このように資金の提供者はNPOの良きパートナーとして、信頼にもとづく関わり方が必要であろう。
また、より大きな組織はより拡大し、より小さな組織はより縮小していくという二極化が進む中で、このギャップを埋める橋渡しとなり得る資金が必要であろう。前述の「休眠預金活用事業」も金額規模が比較的大きいため、ある一定程度の実績や事業規模を持つ組織でないと活用が難しい。
そこで、比較的リスクの高い新たな挑戦や立ち上げを支えるもの、ある程度の実績を持つ取り組みを発展させるもの、すでに成果が実証されている取組をスケールアップさせていくためのものといったように、組織や事業のステージに応じた資金提供が必要である。そうしたステージに合わせて、助成金だけではなく、寄付、助成、融資など、それぞれの異なる性質と特徴を持つ資金を組み合わせていくことも重要であろう。
4-2. 人で支える
上記のような資金的な支援に加えて、NPOが直面し得る課題をともに乗り越えていける良き伴走者も必要である。良き伴走者とは、課題解決に必要なファンドレイジングや組織運営、ファシリテーションなどの知識やスキルを有するだけではなく、NPOのステージや状況に応じて求められる人物像と役割を果たしていける人である。
日本ファンドレイジング協会がまとめた「国際協力NPO組織基盤の強化に向けた伴走支援ガイドブック」においては、伴走者が心がけたい志向・行動をまとめている。もちろん一人ですべて担うことは難しいため、チームあるいは組織として、求められる役割を果たしていける存在が求められるだろう。
図表9 伴走者が心がけたい志向・行動
5. おわりに
昨今NPOを取り巻く環境は大きく変化している。本稿では、NPOがおかれている状況とその役割を整理するとともに、NPOがいかに事業を通じて社会課題の解決や新しい価値の創造を実現することと、事業実施に必要な資源を獲得することを両立できるかという問いについて論じてきた。同時にそれらのNPOによる取り組みを資金と人の両面で支える必要性について検討してきた。実際にこれらを実現するためには様々なハードルはあるものの、筆者自身もNPOで働く一人として、寄付・社会的投資が進む社会の実現を目指し、一助となるための取り組みを進めていきたい。
【参考文献・資料(掲出順)】
- 日本総合研究所(2020)「若者の意識調査(報告)― ESGおよびSDGs、キャリア等に対する意識―」
- 一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター(2022)『ベンチャー白書2021』
- 内閣府(2021)「令和2年度 特定非営利活動法人に関する実態調査」
- NPO法人関西NGO協議会(2023)『NGO研究会報告書「日本の国際協力NGOの資金調達リデザイン化と財務内容の強化」』
- 認定NPO法人日本ファンドレイジング協会(2023)「国際協力NPO組織基盤の強化に向けた伴走支援ガイドブック」
- 一般財団法人社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(2021)「社会的インパクト・マネジメント・ガイドライン( 2)」
- 認定NPO法人日本ファンドレイジング協会(2020)「認定ファンドレイザー必修研修テキスト」
[1] 経済産業省ホームページより「官民によるインパクトスタートアップ育成支援プログラム「J-Startup Impact」を設立」のページ<https://www.meti.go.jp/press/2023/10/20231006008/20231006008.html>(最終閲覧日:2023年10月31日)を参照。
[2] 株式会社ボーダレス・ジャパンのホームページより「カンパニオとは」のページ<https://www.borderless-japan.com/companio/>(最終閲覧日:2023年10月31日)を参照。
[3] 以下、小沼大地「社会課題解決の主役はNPOよりもスタートアップなのだろうか?」<https://note.com/daichi0715/n/nb2463450e319>(最終閲覧日:2023年10月31日)を参照。
[4] 日本政策金融公庫総合研究所(2022)「2022年度新規開業実態調査」
[5] NPO法人LivEQuality HUBが別に設立している株式会社LivEQualityホームページより「ソーシャル大家事業」のページ<https://livequality.co.jp/owner>(最終閲覧日:2023年10月31日)を参照。
[6] 認定NPO法人ACEホームページより「しあわせへのチョコレート」のページ<https://acejapan.org/choco/ladybird-choco>(最終閲覧日:2023年10月31日)を参照。
[7] 国際NGOセーブ・ザ・チルドレンのホームページより「ABOUT US」のページ<https://savethechildreninvestments.org.au/>(最終閲覧日:2023年10月31日)を参照。
[8] 以下、認定NPO法人日本ファンドレイジング協会による各種取組ついては、同協会ホームページ<https://jfra.jp/>(最終閲覧日:2023年10月31日)を参照。
[9] 以下、みてね基金については、同基金ホームページ<https://fund.mitene.us/>(最終閲覧日:2023年10月31日)を参照。
[10] 以下、山田進太郎D&I財団について、同財団ホームページ<https://www.shinfdn.org/>(最終閲覧日:2023年10月31日)を参照。