これからのふるさと納税
毎日新聞No.652【令和5年12月10日発行】
ふるさと納税制度は、2008年に「生まれ育ったふるさとに貢献できる制度」、「自分の意思で応援したい自治体を選ぶことができる制度」として創設された。返礼品として地域の特産物がもらえるほか、ワンストップ特例制度の導入による手続きの簡略化等により、2022年度には受入額9,654億円、受入件数5,184万件と、これまでの最高記録を更新した。このように、地方自治体の財源確保や地域活性化のために重要な役割を担う制度となったが、一方で返礼品の過剰競争による地域格差の拡大や、寄付金よりも控除額が大きくなる流出超により、自治体の財政状況を悪化させてしまう場合があるといった問題も起きている。
こうした過度な返礼品競争を防ぐため、総務省は2023年10月から、自治体が寄付の募集に使う経費を寄付額の5割以下とするよう、基準を厳格化した。それにより自治体では、返礼品の見直しや寄付額の引き上げといった対応に追われている。
しかし、ふるさと納税の制度自体は悪いものではない。自治体間による競争を促すことで、自治体は寄付をどう集めるか工夫するとともに、地域を見つめ直すことで、地域の魅力を高めるきっかけになる。また、ふるさと納税の返礼品も、地域の商品をPRするきっかけとしてうまく活用することで、地域の新たな特産品を生み出す可能性も秘めている。一方で納税者は、自分たちの税がどう使われるかを考えることで、税に対する意識を高めるきっかけになるとともに、その地域を知ることで興味関心や愛着がわき、その地域への観光や移住も考える人がでてくる可能性もあるだろう。
自治体は、ルールが厳格化された後でも、どのようにしてより多くの寄付を集めるか工夫が求められているが、寄付をする側としては、返礼品を調べて寄付をするだけでなく、ふるさと納税はだれのための制度なのか、本当の意味でふるさとのためになっているのかを改めて考えてみるとともに、他の地域のことも幅広く調べてみてはいかがだろうか。加えて、自分が関わったふるさと納税が、その地域の変化にどれだけ役に立ったか確認するだけでも、ふるさと納税に対する見方が変わるかもしれない。
ふるさと納税をすることで、人々が税や様々な地域に関心を持ち、自治体とともに、地域の未来を考えるきっかけになることを期待したい。
(公益財団法人 山梨総合研究所 研究員 藤原 佑樹)