高齢者と情報格差


毎日新聞No.653【令和5年12月24日発行】

 コロナ禍を経て、社会全般でキャッシュレス決済や各種手続きの自動化・オンライン化が急速に進んだ。当初は、環境変化に戸惑っていた人々も、順次適応することで、その利便性を理解し、若年世代を中心にデジタル環境を活用する方が増加しているように感じる。
 一方で、こうした変化に置き去りにされている高齢者の方が多く存在しており、スマートフォンやタブレット、インターネットなどのデジタル技術に触れたり、使いこなしたりできる人と、そうでない人の間に生じる、いわゆる情報格差(デジタルデバイド)が問題となっている。

 デジタル技術を活用できないことで、キャッシュレス決済のポイント還元や、手続き時間の短縮、費用の削減といった様々な恩恵を受けることができず、それが金銭面・利便性のみならず、情報の入手や情報を活用する機会の平等性を損ね、社会における不平等を拡大させる要因となっている。
 内閣府が令和57月に実施した「情報通信機器の利活用に関する世論調査」によると、スマートフォンやタブレットを「利用している」に該当する回答を年齢別に集計したところ、18歳から29歳の98.5%をピークとして、年齢を重ねるごとに徐々に利用している割合が下がりはじめ、70歳以上では48.4%という結果であった。
 筆者の近所に住む高齢者で、スマートフォンやタブレットを利用していない人に理由を尋ねると、自分には必要ない、使い方がわからない、個人情報漏洩、詐欺被害などのトラブルに遭うのではないか不安だと話してくれた。まさに、こうした理由が高齢者の利用者が増えない要因ではないだろうか。

 デジタル技術の活用は強制されるものではないが、情報格差という問題解決に向けて、高齢者に情報通信機器を普及するには、国や自治体、民間事業者等が相互に協力する中で、スマートフォン・タブレット、インターネット環境の整備や、ITリテラシー教育を引き続き行うことが重要である。それにより、高齢者の不安感を取り除き、利便性やその価値を実感するための相談・支援の窓口の充実、さらには実際に情報通信機器に触れる機会など、高齢者がデジタル技術を受け入れるきっかけ作りが一層必要となろう。

(公益財団法人 山梨総合研究所 研究員 山本 晃郷