“会議”じゃなきゃダメですか?
毎日新聞No.654【令和6年1月7日発行】
新年を迎えて晴れやかな気持ちで紙面をご覧になっている方には申し訳ないが、年が変わっても我々の周りには引き続き悩ましい問題が数多く残っている。課題先進国といわれる日本には、介護、子育て、防災など様々な地域課題が山積しており、それらに対しては自治体などが様々な英知を集めて向き合っている。
“英知を集める”と書いたが、その方法としては課題に対する関係者や専門家を集めた協議会の開催によってなされることが多い。これらの協議会は、地方自治法において自治体の議会の議決なしに設置できるとされている連絡調整のための協議会がほとんどだ。地域特性を踏まえるため圏域や市町村といった区域ごとにそれぞれ設定されていることが多く、必要に応じて年に数回開催されている。
ここで気になるのは、協議会の開催に様々な面で時間がかかることだ。会議への参加にはまとまった時間が必要だが、参加者の日程調整、会議用資料の事前発送、議事録の作成などの付帯業務にも多くの時間が割かれている。このうち日程調整や資料の事前発送は、「参加者が同じタイミングで同じ課題に向き合う」という会議の性質に由来するし、議事録作成は「会議の過程や結果を見える化する」という必要に駆られて行っている。どれも確かに重要な段取りであるものの、圏域や市町村ごとに開かれていることを考えると、連絡調整のためにかかる総体的な行政コストはかなり大きなものになるだろう。
そこでこのような会議にICT技術を活用したやり方、例えばオープンプラットフォームでの意見交換を導入してはどうだろうか。議題資料を掲載して一定の期間で関係者に意見交換をしてもらう形式にすれば、参加者の日程調整や資料の事前共有は不要になるし、書き込まれた意見はそのまま議事録として見える化されることになる。やり方を変えるだけなので協議会の詳細を定めている設置要綱を修正すれば済む。
歴史を紐解けば会議と名の付くものは紀元前からあったそうだが、その昔は貴族などの有閑階級が集って議論を行っていた。昨今のような不確かで変化の激しい時代には、参加者のみならず運営する側にとっても貴重なリソースである時間を、効率的に活用することが重要になってくるだろう。対面とオンラインの使い分けによる、課題解決のためのより良い議論が行われることを期待したい。
(公益財団法人 山梨総合研究所 主任研究員 前田 将司)