デジタル技術による防災力の強化
毎日新聞No.656【令和6年2月4日発行】
令和6年1月に能登半島地震が発生してから1か月が経過した。被災された方々には心よりお見舞い申し上げたい。
全国の自治体ではデジタル技術を活用して防災対策を行う「防災DX」の取り組みが進められている。防災DXとは、AI・IoT・ビッグデータなどの最新デジタル技術を災害対策における「平時」「切迫時」「応急対応」「復旧・復興」の各フェーズにおいて活用することで、災害リスクを最小化して安心して暮らせる社会の実現を目指すものである。能登半島地震の発生後においても様々なデジタル技術が活用され、ドローンによる被災地への物資搬送やアプリケーションによる避難所データの集約・可視化などが行われた。今後も復旧や復興が進む過程においてデジタル技術が有効に活用されることで、円滑かつ迅速に地域の再建が進むことを期待したい。
山梨県内でもいくつかの自治体が独自の防災アプリを住民向けに提供しており、最新の防災情報や迅速な災害情報の発信などを行う取り組みが進められている。また、長野県ではAI画像解析でため池の水位を遠隔監視する実証実験が行われているほか、上田市ではスマートフォンアプリを活用して消防団の活動を支援する取り組みも実施されている。今後も災害対策にデジタル技術を積極的に活用しながら、地域住民が災害に関する情報を迅速に取得できたり被災時に的確な支援が受けられる環境整備を、官民が連携して進めていくことが望ましいだろう。
個人や家庭での災害対策としては、身近なデジタル機器であるスマートフォンを有効に活用することが考えられる。自治体や民間企業が提供する防災アプリでは、位置情報に基づく近隣の避難所やハザードマップの確認、プッシュ通知による迅速な災害情報の把握、災害用伝言サービスによる安否確認などが可能である。そのため、普段からスマートフォンの防災アプリ等を適切に設定しておくとともに、避難後でもスマートフォンが使用できるよう災害時の電源確保手段などを事前に検討しておくことが重要となるだろう。なお、災害による通信障害の発生も想定されるため、平時から防災行政無線を確認しておくことやラジオ等でも防災情報を入手しておくことも大切であろう。
(公益財団法人 山梨総合研究所 主任研究員 櫻林 晃)