ウェルネスツーリズム
毎日新聞No.658【令和6年3月2日発行】
2月9日、「やまなしウェルネスツーリズム推進協議会セミナー」が開催された。琉球大学の荒川雅志氏によると、「ウェルネスツーリズム」とは、旅先でのスパ、ヨガ、瞑想、フィットネス、ヘルシー食、レクリエーション、交流などを通して、心と体の健康に気づく旅、地域の資源に触れ新しい発見と自己開発ができる旅、原点回帰しリフレッシュし明日への活力を得る旅と定義している。私は、「山梨におけるウェルネスツーリズムの現状」というテーマで話題提供し、その後のパネルディスカッションにも登壇した。
やまなしウェルネスツーリズム推進協議会は、2014年、当時増冨の湯の支配人であった小山芳久氏が設立し、現在も会長を務めている。小山氏とは推進協議会設立前からの付き合いで、ウェルネスツーリズムの普及に関して一緒に活動していた。
当時、ある研究会でお話しした記憶があったので、過去のファイルを振り返ってみると、2012年に「山梨におけるウェルネスツーリズムの可能性」というテーマで講演していた。ちょうどLOHASが注目されるようになってきた頃であり、健康志向が広がりを見せていたことを背景に、ウェルネスツーリズムが今後注目されていくという内容であった。
あれから12年、そして推進協議会が設立されて10年が過ぎたが、ウェルネスツーリズムという言葉や概念が広がってきているかというと、そうでもない気がする。とはいうものの、山梨においてどのような旅が増えてきているかというと、ウェルネス関連であることは間違いないだろう。
例えば、身延町の宿坊である覚林坊では、朝の礼拝や宿坊の周りの散策など、歴史と文化の体験が人気を博している。小菅村の「NIPPONIA(ニッポニア)小菅 源流の村」と芦川町の「LOOOF」は、いずれも古民家をリノベーションした宿泊施設であり、森林に囲まれた村内の散策や野菜の収穫や焚火等、四季折々の楽しみを満喫できる。
現在、日本における観光、特にインバウンド観光は、地域が注目されるステージに入ってきている。そのキーワードは、ウェルネスツーリズムではないだろうか。
(公益財団法人 山梨総合研究所 理事長 今井 久)