諏訪の五蔵めぐり


毎日新聞No.659【令和6年3月17日発行】

 1月初め、長野県の上諏訪駅周辺にある日本酒の酒蔵巡りに出かけた。「諏訪の五蔵めぐり」と称されるもので、2,500円の「ごくらく」セットを買って、甲州街道沿いの500m程度のエリアにある5つの老舗酒蔵で試飲などを楽しめる。

 平日の朝、おじさん3人で甲府の2つ隣の塩崎駅から普通電車に乗り、上諏訪駅には1時間20分ほどで着いた。ひとつ手前の茅野駅から先が一部単線となっており、行き違いの電車待ちがなければもう少し早く着くのにと思いながら、車内から予行練習。
 昼食に名物のウナギを奮発して、レトロな雰囲気の片倉館でひと風呂浴びて、いよいよ酒蔵めぐりへ。
 駅から一番遠い酒蔵からスタートし、駅に向かって街道を歩きながら、順次訪問。1か所で4から5種類の日本酒を選ぶことができ、20mlずつ味わうことができる。たった20mlと思うかもしれないが、5軒回ると2.5合くらい飲んだ計算になるからあなどれない。リピーターの方は慣れたもので、ミネラルウォーターを持参している。
 かなり良い気分になり、財布の口も緩み、お土産もたくさん買うことに。最近完成した試飲ルームで見事な中庭をみながらメニューにない特別サービスの梅酒を飲ませていただいたら、おもわず買ってしまったり、酒粕を塗った珍しいせんべいに、つい手が伸びてしまったり。後半、ちょっと飽きてきた日本酒に代えてビールを試飲できるところでは、これが実においしく感じられ、ビールもお土産に。よくできたもので、最後に立ち寄った先では、ほかの酒蔵の商品もまとめて宅配してくれるとのこと。5つの酒蔵で一体感が感じられるちょっとしたテーマパークという趣だった。
 一方、ちょっと残念に思ったことが2つ。日本酒とは思えない風味を持つ魅力的な試飲商品を買おうとしたが、待っていても係の方が現れず、断念。最後の酒蔵を出たのが4時頃で、中途半端のほろ酔い気分だったことから地酒を飲んで帰ろうと思ったが、昼飲みができる店が定休日だった1軒しかなく、駅の観光案内所でもわからず、こちらもあきらめることに。来年も訪問しようと思うので、是非、善処を。

 うとうとしながら帰りの電車で考えた。山梨ではワイナリー巡りができるけれど、来訪者に十分満足してもらえているだろうかと。ちょっとした工夫で来訪者の満足度合いが上がり、リピーターになり、カネを落としてくれる、ということを実感した一日だった。

(公益財団法人 山梨総合研究所 専務理事 村田 俊也