年度の節目に思うこと
毎日新聞No.660【令和6年3月31日発行】
いよいよ令和5年度も今日が最終日である。
ところで、普段何気なく使っているこの「年度」というものは一体何だろうかと、ふと疑問に思い調べてみた。それは、制度の目的に照らして、暦年とは異なる区分で設定している期間とのこと。我が国では、国や自治体の会計年度や事業年度の始まりや、学校の入学式、さらには新入社員の入社式などが行われるのも4月が大半であることから、年度とは「4月1日~3月31日」と思ってしまいがちだが、必ずしもそうではない。
例えば、山梨や長野でなじみの深い日本酒やワイン造りでは、その年の製造量を把握するために国税庁が規定した7月始まりの「醸造年度(酒造年度)」が使われている。また米や穀物は、収穫時期を基準に農林水産省が定めた11月始まりの「米穀年度」が使われている。民間企業でもそれぞれ「事業年度」が設定されているが、国税庁によると、決算月が最も多いのは行政と同じ3月であるが、次いで9月や12月も多いとのこと。このように、年間における事業活動のサイクルに応じて、それぞれの「年度」が設定されているのである。とは言え、就職や進学、人事異動など、この3月末に1年の区切りを迎える方も多いのではないだろうか。
私自身、仕事の区切りが3月ということもあり、この1年間でどんな変化があったのか、その中で何が得られたのか、あるいは何を失ったのかなどを振り返ることにしている。仕事だけではなく、自分自身や家族の生活であったり、社会や経済の影響など、たった1年とはいえ様々な変化があったのではないだろうか。新たな出会いや経験は、自分自身の視野を広げたり、新たな知識やスキルを身に付けることにつながった。一方で、自分の思いとは反対に、変わらなかったことや変えられなかったこともある。その中で、私自身が得られた達成感と同時に後悔や反省、さらには自分の力を超えた大きな変化というものも感じている。
新たな年度に向けて、夢や希望を思い描くことはとても大切だ。しかし、「今」という足元が揺らいでいては、未来に踏み出す一歩もおぼつかない。だからこそ、令和5年度の最後の日に自分自身の1年を振り返り、足元を見つめ直してみてはどうだろうか。そこから、未来へ踏み出す一歩が見つかるかも知れない。
(公益財団法人 山梨総合研究所 調査研究部長 佐藤 文昭)