買物弱者の現状


毎日新聞No.661【令和6年4月14日発行】

 全国では、人口減少や少子高齢化等を背景とした、地域交通の弱体化などの理由により、日常の買物機会が十分に提供されない人々、いわゆる「買物弱者」の問題が取りざたされている。この問題は、農村・山間部のような過疎地域に加え、空洞化が進む都市部でも顕在化している。
 私も、人口減少に伴い、利用者が減少した近くの商店やスーパーマーケットなどが撤退することで、買物場所までの移動距離が遠くなり、車などを持っていない高齢の方が重い荷物を持ち、帰宅途中で疲れて座り込んでいるという光景を目にしたことがある。

 経済産業省では、こうした買物弱者の問題解決に向け、201012月に「買物弱者応援マニュアル」を公開し、民間事業者、地方自治体及び住民が相互連携できるよう、普及啓発に取組んできた。
 これまで、自治体を中心に移動支援を兼ねたデマンドバスの運行や、住民ボランティアの協力による送迎サービス、自治体から委託を受けた事業者の移動販売車による訪問販売、民間企業においても、ネットスーパーを通じた配送サービスなど、地域の特性に合わせた取組みが行われている。
 しかし、過疎地域の自治体では、燃料費の高騰や利用者の減少に加え、運転手の確保ができない等の理由で、バスの路線廃止などが進んでおり、ボランティアの協力による送迎サービスも担い手の高齢化が進むなど、買物弱者の移動の確保が危ぶまれているとの声もある。
 こうした問題を踏まえ、商業施設の維持や新たな開設、交通の利便性の向上といった事業を継続する一方で、デジタル技術を用いた問題解決も期待されている。自動運転技術搭載バスの運行試験や、ドローンによる配達などの実証実験が行われているものの、一朝一夕で実現できるものではないため、従来の取組みも併せた、切れ目のない買物弱者の支援構築が求められている。

 今後も自治体、事業者、住民が連携を取りながら、社会全体で問題に向き合うことが必要であり、安心安全な暮らしのために、引き続き解決策の模索が必要である。

(公益財団法人 山梨総合研究所 主任研究員 山本 晃郷