若手自治体職員の早期退職
山梨日日新聞No.44【令和6年4月29日発行】
新型コロナウイルス感染症が感染症法上の5類感染症に移行して来月で1年を迎える。
今般のコロナ禍という“非平時”への対応は、全国の自治体において、それ以前から進めてきた行財政改革等による職員減の影響を顕在化させた。
こうした一連の負担増に伴う公務員の疲弊をめぐっては、厚生労働省を始め国家公務員、特に若手官僚の早期退職の問題が注目されるものの、地方公務員、つまり自治体職員の中でも若手職員や女性職員の早期退職についてはあまり大きく取り上げられてこなかった。
総務省が毎年全国の自治体を対象に行っている地方公務員の退職状況等調査結果より、最新の2022年度の状況をみると、25歳未満、25歳以上30歳未満、30歳以上35歳未満の3つの年代での自己都合退職の割合は、25歳以上30歳未満が第1位、30歳以上35歳未満が第2位、25歳未満が第3位の順で高くなっている。このことから、特に、入庁間もない若い世代の自己都合退職は、働き方の多様性が進んでいることも大きく影響しているものと思われる。
そうした自治体行政における若手職員・女性職員をめぐる労務環境に関するより詳細な実態を把握するため、筆者は、2023年12月から2024年1月に掛けて、過去に自治体を退職した経験のある20~34歳の男女1,223人を対象にWEBアンケート調査を行った。
同調査では、退職経験がある人の主な退職理由について、次のとおりの結果となった。
本調査結果だけでは、自治体行政における若手職員・女性職員の労務環境の一部しか分からないが、退職の主な理由としては、自身のキャリアアップを見据えた将来志向の退職(転職)から、給与の額や休暇の取得といった待遇面の他、それらに加え、組織内の対人関係等から派生したメンタル面での不調まで幅広く見られるとともに、男女間でも僅かではあるが違いが見られた。
全国の自治体では、採用時のミスマッチ防止や採用後のメンター制度の導入など、若手職員の育成支援のための様々な取り組みが進められている。退職を未然に防ぐためには、職員一人ひとりが置かれた状況をできる限り詳細に把握した上で、こうした取り組みを進めていく必要があるのではないだろうか。
(公益財団法 人山梨総合研究所 主任研究員 宇佐美 淳)